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【藍玉に圧倒される原石達】
トルネンブラ族達から感謝のメロディをオルゴールという形で受け取った二人。
聴き入りながら雑務に戻る事数週間…
突然の訪問者に意表を突かれる事となる。

「バーナクルさん?!」
「どこのダゴンかと思ったじゃねーですかい」
「食屍鬼だって。で、食屍鬼についてあんた等に尋ねたい事があってよう」

他の個体と大きく違い、脇腹に魚のような鰓、背中からは魚のような背ビレと尾が伸びている不思議な体型の食屍鬼である。
海域が彼の縄張りなのだが、アザルシスの海は汚染水域も水棲の異形も多い険しい領域だ。険しいからこそ外敵もまずいなかったのだが…

「見慣れない小舟がしょっちゅう行来しているって報せを聞いて見に行ったらよ、確かにいたんだ。何者か訪ねに行ったらめちゃめちゃ攻撃してきて近寄らせてくれねーんだ」
「鮫と間違われたんじゃね?」
「そう思って何度も叫んだり信号出したんだけどよ、そしたらなんて返したと思う?『こいつは食屍鬼、末尾No.55のアクアマリンだ!』って。本人じゃなくて銃持った白装束野郎が答えたんだ」
「はあ?水族館が動くわけねーしな?」
「わざわざ名乗って非常に怪しいですね。
しかしプロフェッショナルである貴方を近寄らせない実力者ですか…」

つまる所、『自称No.55の正体を探ってくれ』との依頼だ。
会頭エニアからの紹介でやってきたバーナクル、なるべく海の事は海の者だけで済ませたかったがそうもいかない危機感を肌で感じたようだ。

「せめて得体の知れない存在にはしないと、なるほど。調べてみましょう」
「頼むわー。俺調べ物苦手でよー」

二人は判っていた。彼は海から離れる時間が惜しいだけだ。
止血や痛み止め等の医薬品が衣服の下から若干匂う。
それでも海は見張っていたいし脅威は取り除きたいのだ。
彼に代わって陸地で思考を張り巡らせる二人…


「陸の物がルール違反したら益々海を利用できなくなっちまう。」
「それだけではありません。水棲の異形の下、深淵には邪神がいます。癇癪に触れて浮上されて津波でも起こされたら一大事ですよ」
「それは大袈裟だろ……と言いたいがそもそも当のNo.55って誰だ?」
「…実は言うと心当たりがあります。ルビーさんの手伝いをしていた時に偶々聞いた記憶がありましてね」

同胞ルビーの証言とザイトの記憶が正しければこうだ。
末尾No.55はウォーレン博士から造られた食屍鬼で、名はヘリオドール。闘うためだけに生まれてきたような存在で地下闘技場から出た事がないし出たがらない。地下闘技場の格闘王的存在でバトルジャンキー。

「地下闘技場を知らんのか、偽物ども…」
「お互い名が知れてない今の内に鎮めた方が良いですよ。闘技場の選手にもお客様にも困惑させてしまいますし、何よりヘリオドールさんを気に入っている博士が耳にしたらどう思うやら…」

どうも思わんだろ、と言いかけたが黙っておいた。


別の国も関わるので念の為、捕獲の大義名分として罪状を調べたが…
小船の窃盗、傷害或いは傷害致死…合わせてもほんの数件しか見当たらなかった。

「妙だな、実力者のくせにやってるこたぁセコい」
「言われてみれば……」
「もしかしたら特定の目的があるかもしれねえ。先日の偽物どもとは毛色が明らかに違うぞ。出現場所の範囲を定めようぜ」

目撃情報含め辿っていった結果……

『縢りの手』近海を中心に航海しているのが明らかになった。
その国は一度は滅び、名を改めた発展途上国だが、凄まじい早さで再興しており『赫怒の牙』とも協力体勢のある友好国である。
つまり国自体に悪い噂はなく、ましてや『白い境界』を泳がすような緩さもない硬派な国柄なのだが…


埒が明かないので直接会ってみようと、端末越しにバーナクルに協力を求めたが丁重に断られた。

「そもそも俺が頼まれたのそこからなんだ。
だけどな、画質は粗いがあれから数枚撮った画像があんだよ。あんたらの端末にコピー送っとくからよく見てくれ。参考になりゃ良いな」

送られた画像は数枚あったが、よく判らない内容が半分を占めていた。
というのも、画質が粗い原因でもあるのだが水飛沫が飛び交い、波紋で生じた振動によるブレだったりと、激闘が繰り広げられていたのがよく判る凄まじい光景ばかりだったからだ。

「水飛沫に血が混じってんな。相当な痛手食らってやがるぞ」
「相手は水を操る異能力者…?だとしても異様な強さですよ、この流れや勢いは……
神格とまではいきませんが非常に高度…!」

画像越しにフラグを探るのは難しいが、対象の写りの小ささ・粗さ、そして何より格の違いで困難を極めた。

「お前の異能でも探るのが難しいか、画見てフィーリングで推測するしかねえな。
…この白装束の後ろに立っている青いのがそうだとして〜
…なんか黄色い丸いの持ってるな。
……んん?なんか緑色の尻尾みてえのあるなこいつ??」
「確かにありますね、しかも複数本?……尾じゃなさそうですよ。触手です。
ほら、よく見ると船に巻き付いてしがみついてます。」
「異形か?!」
「なんとも…言えませんね…」

体型こそ異形だが食屍鬼であるザイトからの微妙な返事。
後天性の可能性も無きにしも非ず。

「とにかく、ヘリオドールと無関係の野郎ってことだけは判った。中間報告だけ済ませて保留にしとこうぜ。他にも偽物がいるんだ、回り道して調べ続けようや。きっと辿り着く」
「根拠は…?」
「決まってんだろ、勘だよ勘。テンション下がってんじゃねーぞ、世の中わけわかんねー奴と強え奴ばかりで一筋縄じゃ行けねえもんなんだよ。」
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