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「『楽園』に用があるとはまた珍しい。それで何かね、私と戯れた後送れば良いとでも?」
「バカ野郎、冗談は格好だけにしとけよ。俺ぁ忙しいんだ」
青い肌と銀の毛色、そして顔立ちまで瓜二つだが異なる点と言えば片や入れ墨はスーツの下にあり、片や入れ墨も何もかもオープン且つ張りに張った筋肉質の巨躯であること。
「正確に言えば『楽園』にある焼却炉に用がある。無事に帰るためにも五体満足でいなきゃあなあ」
「たしかファミリーの一人が勤めていたな?あの威勢の良さは愛らしくて私もよく覚えているよ」
「おうよもう一度拝めるよう祈っとけ」
「誰にだい?」
「火の神、正しくは旧支配者だっけか」
火の旧支配者と聞いていつもと異なる笑みを見せた。葉巻の先を噛みちぎり、燭台で火を点ける。燻らす紫煙、ゆっくりと換気口に吸い込まれていく。
「こればっかは冗談でもキッツいからな。だが」
「彼はジョークが巧くない」
無言で悪い笑みを浮かべながらの、同意を示す指差し。
「御本人だと思うがね、私は」
「根拠はあんのか?」
「昔あったとある軍基地が赤い一夜の日に焼失した話くらいは判るだろう?」
「当ったり前だ。あの後しばらくは基地位置を火の旧支配者にチクった情報屋探しで、ミリも関係ねえ業界まで踏み込むバカが多かったから忙しすぎて体重減ったわ!」
「ふふふ、落ち着きも力も無い者の世話は苦労するな。それで元軍基地も今や見る影も無いが、無いと言えば火の旧支配者も無いものばかりだ。信仰、味方、居場所…」
「もう少しであんたとビンゴしていたな。で、なんだ?」
「最初で最後の拠り所が軍基地、ガラクタと化したそれも『楽園』に送られた。今の技術なら彼の力を遠隔操作し、焼却炉化させるのも可能だと思うのだがね」
「時代の流れは悲しいねえ」
「私は君を焼失する方が悲しいぞ、せめてこの手で抱」
「ファミリーが独りモンに敗けねーよ、相手が怪物だろうと神だろうとなっ」
葉巻を奪い取り、自身の舌先に押し付け火を消した。
「熱い土産話、待ってるよ。サファイア」
「砂漠の中心にいるやつの台詞と思えねーな」
握り潰される吸い殻。
昂ぶる気持ちを抑えるかのように青薔薇の入れ墨を撫でながら、サファイアと呼んだ男の背を見送った。
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