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「No.10、分離して蘇生させようって推してばかりで…面倒だな」
「片割れなんて一向に目が覚めないし脆そうだし
解放した所で使えるのか?分離して処分が妥当そうだが」
「ま、最終的にはウォンド博士の采配に掛かっているがな」

頭部で繋がって生まれてしまった俺達だが
俺は自由を与えたいだけなんだ。
なかなかどうして判ってもらえない。
……博士が取り掛かってくれてるようだが
打ち合わせと現状と合わないだと?
待て、待ってくれ、今はそれあああああああ













「ぎゃー?!来やがったな?!
もう夜鬼に囲まれてるうううひいいい」
「ユーちゃん拐いめ!」
「ユーちゃんを返せ!」

何故か俺をよく知る暴力団のガキ達『愚落』が
何故だが放っておけなかったし居心地良いから
宛もなかったのを良い事に用心棒として居着いていたが…
な、なんなんだあいつは?!陣形にスキがない、逃げ…
られねえうおおお?!
片眼鏡の男を筆頭に、10人の夜鬼に囲まれて捕まった。
て、手詰まりだ……俺はこれから何をされるんだ……













「ユークレース氏、何をあんなに躊躇うんだろう?
最善の策じゃないか」
「時間が惜しいのに…
早く『ワールドイーター』を使ってもらわないと
侵食が深刻化するぞ?別世界に飲まれるぞ?」
「あいつも積極的なのにな。
あれぐらいしか出番もないだろうに」

違う、アイトが笑顔で別策を拒んだのは
情でブレる俺に踏ん切りを付かせる為であるし
俺の策を完全再現するのも良い意味で想定外を齎すのも
アイトの力があっての事。
アイトの異能がなければ俺はこうして即時復帰もできない。

ああ、解っているのに。
あの形容し難い神性生物は、苦しみ悶ながら
自分に都合の良いように世界の理を書き変えようとしている。
俺達は奴が持ち出す別世界を
異能『行かずの駒は神座を食いちぎる(ワールドイーター)』を持ってして消す。
俺の組んだ式を、アイトが相手の心身に刻み込み成す儀式だ。
…最善にて唯一の手札だが
最大の欠点は時空間を糾す際に発生する負荷を
アイトが一身に受けなければならない点。
それだけでなく、異能を確立させるまでの間
あの異形に心身蝕まれるのは回避不能…
最小の被害ではあるが、最悪の手段だ。

俺は竜王で、自分は奔王だから、駒だからと。
俺が停まれば、あいつは動く…
俺が提案すれば、あいつは愚直になって実行する…
自由を与えたはずなのにお前を縛り付けてしまっていると言えば、
私は貴方に尽くすという自由を行使すると言い…
ヒトは天の邪鬼だと言うが
あいつは俺にできない事を代行してくれているんだ。

ほら、思った通り。
異形の魔の手に蝕まれながらも陣を完成し異能を確立させた。
アザルシスが元に戻る状態に巻き込まれた異形は消滅していく…
同時に、巻き込まれたアイトも、歪んでいっている。
全身の骨と、筋肉と、臓物が、悲鳴を上げている。
異形は消え、アザルシスは元に戻った。
戻っていないのはアイトだけだ。
歪みの二次被害に合わぬよう回収までに186秒と定めたのは
俺の方なのだが、コンマ一秒でも、早く、早く触れて安否を確かめたい。

離したのは俺の方からなのにな。
今度はすぐ会いたいと願っている。
俺は俺であることを忘れている間に
アイトにしてやれた事はあっただろうか?











「目が覚めましたか?」

言った側が、寝台に磔になっている。

「今までの経緯をお教えしましょう。」

辛うじて動いている右腕、そして俺の額に指先を当てる。
光の波紋が微かに波打ち、記憶が注がれる。
異能『永遠の祘(メモリスタート)』。
ターフェアイトはそう言った。

「………そうか、俺はまた」
「お陰様で世界は救われて74回目となりました。」
「お前が救われていないよ」
「貴方がそう思うならそうなのかもしれません。」
「どうしてそう、尽くせるんだお前は…」
「貴方と対面する為ですね。」
「分離を決めたあの日から、俺の一存が始まっていた。
俺を恨んでも良いのに…」
「顔の皮膚を勝手に頂きました。
それで十分。私は不自由した覚えもありません。」
「時が進めば俺以上俺以外に頼れる豪の者が現れるはずだ…」
「貴方を差し置いて終結は有り得ませんね。」

終始、慣れた風にしかし嫌味のない
柔らかい笑みで返される。

「俺は大事な事も何もかも、忘れて逃げて
進歩もないのにお前ときたら…」
「いいえ、ユークレース。
貴方は毎回しっかりアップデートなされています。
当初は私は目覚めるのも遅く、貴方と会話もままならなかった。
世界は回り廻るものです。貴方は逃げてなどいない。
常に前進しています。私は常に貴方の後ろを追う側。」
「俺は……お前と話したかったのかもな………」

だから離したのか俺は?














「ぎゃー!また来たー!!」

ま、また?!どういう事だ?!
あの片眼鏡と夜鬼10人がいつ来たってんだ?!
まあいい、数は多いが奴等の動きは読めた。
フェイントを混じえて攻撃の射程に納めて
一人一人叩き落としてやるとするか!


……
………






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