蟹〜
「最近はあんたがよく顔を出すようになったんだな。」
「王が君にそんなに会いに来ていたのかね?」
指差す方に視線を見遣ると、極細の鮮やかな針が数本落ちているのが判った。
それは王ことセプタリアンの体から髪の毛の様に抜け落ちる毒針である。
これくらい細い物だと虫刺され程度の毒性しかなくほぼ無害。
ちなみに針は細くて脆く、ピッキングには向かない。
その点だけは安心して良い。
…が、問題はそうではなく。
抜け針の量からして僕の想定よりも頻繁に訪問していたようだ。
一国の王が、罪人のいる牢屋の前にだ。
「聞きてえのは俺の方だ、俺がなんか珍しいのか?」
「それはどうかな」
「ちっ、同じ顔で同じ台詞言いやがって……」
この青年は…今はノゼアンと呼ぼうか。
人間だが青肌スキンパックを付けて食屍鬼を自称している。
(尚、魔術の一環で自力でパックは外せない。)
そう、我々複製の食屍鬼とは種族からして違うのだ。
生まれも……
「飯の時間もバラバラでここにいると時間の感覚が狂っちまうや。
外じゃあ何が起きているんだ?」
「めでたくない事ばかりさ。」
「例えば?」
「行方不明者、おそらくは難民化した者が2割からなかなか変動しない事とか。」
「へっ、あんた等が喰った量じゃねえの?」
「僕達は飯の時間と量はきっちりしている方でね。
だから特定に困っている。」
煽った側が軽く舌打ち。
人間の不明者が現れると人食い種である食屍鬼が疑われやすい。
そうでもないと言い切れる理解者は近年増加しつつあるが
やはり固定概念は拭えないし、かといって否定もしきれない。
「変わらないモノなんてねえんだよ。
俺がガキの頃過ごしたみてえに」
「此処より南西側とは聞いたが
君も素性がはっきり判らんのだよな」
「俺が俺自身判ってねえし当たり前だろ?!」
彼は捨て子だ。生まれて間もない状態で拾われた。
育て親が人間屈指の盗賊と、食屍鬼屈指の策士という。
ノゼアンは賊のハイブリッド…
「お陰様でしぶとく生き延びれるようにはなったけどよ。
災害ばっかりで地形がしょっちゅう変わるから
よそ者は来ねえし、悪いことしても逃げ隠れし放題。」
「足腰が強いわけだ。」
獣のようだに、と言いかけたのは飲み込んだが
逆に核心突く事を吐いてみた。
「……変幻谷育ちか。」
「なんだ、知ってんのかよ。
都会育ちと縁がないと思っていたのに。」
「以前まではそうだったが今はそうもいかない。
『縢りの手』の領土圏内に認定されたんだ。」
「ぅん?」
「そこを拠点にし、難民を無給の労働力
所謂奴隷化している輩がいるとの話がある。」
「…『縢り』の奴が囚われてるってか?」
「細かく言えば『縢りの手』になる以前の国の者。
それと変幻谷の先住民が対象だ。」
「んだと………」
目の色が変わってきた。
なるほど、そういう事か。
「見せしめのつもりか?俺にそんな話ふっかけて」
「難民救出にあたって君の力を借りたい。君の力が必要だ。」
目を丸くし、呆気にとられた様子。
なんとも表情豊かな。
「は?俺に?」
「君の身のこなしと経験値への評価は折り紙付きだよ。」
「別に嬉しかねーな、それに手助けした所で俺が得する事が無えし。」
「言い換えよう。王は武人だ、武人として君を評した。
評価に見合う報酬も当然用意する。
減刑、褒賞金、その他君のリクエストに応える等。」
食い付いてきたのが判る。
そして肝心な事は僕は暈し、ノゼアンに言わせた。
「リクエストかよ、土地寄越せっつったら寄越すのか?」
「可能だ。」
「親父を返せつったら返すのか?」
「可能だ。例の件を聞いてから王が即身柄を確保したからな。」
「マジかよ………」
育て親に未練があったのか判らなかったが、これではっきりした。
冷凍保存された育て親の行方……生存確認できれば良し
死亡即ち食屍鬼による捕食と見て、全個体対象に仇討ちも良し。
そんな所だろう。
「やるか?やるなら3日後には発つぞ。
体が鈍っているんじゃないか?」
「悠長な事言ってねえで、明日からでも構わんぞ俺は。
変幻谷育ちは変化に対応できる奴だ。」
「王が君にそんなに会いに来ていたのかね?」
指差す方に視線を見遣ると、極細の鮮やかな針が数本落ちているのが判った。
それは王ことセプタリアンの体から髪の毛の様に抜け落ちる毒針である。
これくらい細い物だと虫刺され程度の毒性しかなくほぼ無害。
ちなみに針は細くて脆く、ピッキングには向かない。
その点だけは安心して良い。
…が、問題はそうではなく。
抜け針の量からして僕の想定よりも頻繁に訪問していたようだ。
一国の王が、罪人のいる牢屋の前にだ。
「聞きてえのは俺の方だ、俺がなんか珍しいのか?」
「それはどうかな」
「ちっ、同じ顔で同じ台詞言いやがって……」
この青年は…今はノゼアンと呼ぼうか。
人間だが青肌スキンパックを付けて食屍鬼を自称している。
(尚、魔術の一環で自力でパックは外せない。)
そう、我々複製の食屍鬼とは種族からして違うのだ。
生まれも……
「飯の時間もバラバラでここにいると時間の感覚が狂っちまうや。
外じゃあ何が起きているんだ?」
「めでたくない事ばかりさ。」
「例えば?」
「行方不明者、おそらくは難民化した者が2割からなかなか変動しない事とか。」
「へっ、あんた等が喰った量じゃねえの?」
「僕達は飯の時間と量はきっちりしている方でね。
だから特定に困っている。」
煽った側が軽く舌打ち。
人間の不明者が現れると人食い種である食屍鬼が疑われやすい。
そうでもないと言い切れる理解者は近年増加しつつあるが
やはり固定概念は拭えないし、かといって否定もしきれない。
「変わらないモノなんてねえんだよ。
俺がガキの頃過ごしたみてえに」
「此処より南西側とは聞いたが
君も素性がはっきり判らんのだよな」
「俺が俺自身判ってねえし当たり前だろ?!」
彼は捨て子だ。生まれて間もない状態で拾われた。
育て親が人間屈指の盗賊と、食屍鬼屈指の策士という。
ノゼアンは賊のハイブリッド…
「お陰様でしぶとく生き延びれるようにはなったけどよ。
災害ばっかりで地形がしょっちゅう変わるから
よそ者は来ねえし、悪いことしても逃げ隠れし放題。」
「足腰が強いわけだ。」
獣のようだに、と言いかけたのは飲み込んだが
逆に核心突く事を吐いてみた。
「……変幻谷育ちか。」
「なんだ、知ってんのかよ。
都会育ちと縁がないと思っていたのに。」
「以前まではそうだったが今はそうもいかない。
『縢りの手』の領土圏内に認定されたんだ。」
「ぅん?」
「そこを拠点にし、難民を無給の労働力
所謂奴隷化している輩がいるとの話がある。」
「…『縢り』の奴が囚われてるってか?」
「細かく言えば『縢りの手』になる以前の国の者。
それと変幻谷の先住民が対象だ。」
「んだと………」
目の色が変わってきた。
なるほど、そういう事か。
「見せしめのつもりか?俺にそんな話ふっかけて」
「難民救出にあたって君の力を借りたい。君の力が必要だ。」
目を丸くし、呆気にとられた様子。
なんとも表情豊かな。
「は?俺に?」
「君の身のこなしと経験値への評価は折り紙付きだよ。」
「別に嬉しかねーな、それに手助けした所で俺が得する事が無えし。」
「言い換えよう。王は武人だ、武人として君を評した。
評価に見合う報酬も当然用意する。
減刑、褒賞金、その他君のリクエストに応える等。」
食い付いてきたのが判る。
そして肝心な事は僕は暈し、ノゼアンに言わせた。
「リクエストかよ、土地寄越せっつったら寄越すのか?」
「可能だ。」
「親父を返せつったら返すのか?」
「可能だ。例の件を聞いてから王が即身柄を確保したからな。」
「マジかよ………」
育て親に未練があったのか判らなかったが、これではっきりした。
冷凍保存された育て親の行方……生存確認できれば良し
死亡即ち食屍鬼による捕食と見て、全個体対象に仇討ちも良し。
そんな所だろう。
「やるか?やるなら3日後には発つぞ。
体が鈍っているんじゃないか?」
「悠長な事言ってねえで、明日からでも構わんぞ俺は。
変幻谷育ちは変化に対応できる奴だ。」
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我々が思っていた以上にノゼアンはタフネスである。
彼が特別鍛えられているのかもしれないが……
だとしても谷の先住民が外部の者に遅れを取ったのが妙だ。
「なんて言うか忘れたが空飛ぶ小型の機械あるだろ。
たまに来るんだが、大体飛んでるだけだが撃ってくる時もある。」
「一般人に兵器を使うとはけしからんね。」
兵器を用いる以上兵隊崩れ級が関わってると見て良いか。
この立地の条件があまりにもよろしくない場に固執する理由…
「流れが激しいだけあって水質が良いんだってよ。
沸かさなくても飲める。
あと色んな物資が流れ着くし
水流で抉られた所から掘り出し物が見つかる事もあるし。
遺物だとか天然資源だとか、まあ小さい『楽園』みたいなもんだ。」
「よく喋るな」
「もうなんも言わねえ!!」
拗ねてしまったようだ。
貶したつもりは毛頭無かったがこれは扱いには気をつけねばなるまい。
コスモ君やタク君とはまた違う稚さが垣間見える。
『最後の楽園』を例えに用いようとしたセンスを褒めようとしたのに。
険しい悪路…土砂崩れが起きやすい脆い地面もあれば
硬くて脆いばかりに整備加工に不向きな岩盤の数々。
足を取られる一方で僕とノゼアンを先頭に後に続く人員も
だいぶ限られる、厳しい状況であった。
「……君の話からある程度敵の像に目星が付いたよ。」
「へえ、一体………オイ何のつもりだてめえ、騙したのか?」
そう言われても仕方がない、話の途中で
彼が振り向いて見えたのが
僕が人差し指を向ける『撃つ』合図であったから。
「騙してなんかいないさ、ホシが空にいるからさ。」
「あ??」
指先から放たれる閃光。
狙った先は、ノゼアンの頭頂部より少し高い角度に飛んでいた
ホシこと異形である。
滑空していた相手の皮膜を貫いた事により
高度は即乱れて堕ち、激流に飲まれる。
「な、なんだよあれ……」
「空飛ぶ異形…もとい異形化した人間。
『無明の繭』でよく見られるタイプだな。
服を着ていたし、流れに対処もできず
何より君も見た事が無いと言うのなら
野生の存在ではないはずだ。」
「巣も餌もない此処で鳥も虫もいやしねえよ。」
「巣ならぬ住まいを作れたのが此処にいた人、先住民なのだろう?
奴等はそこを拠点にしているはずだ。」
「ちっ、『繭』なだけにとんだ寄生虫に目をつけられちまったな。」
舌打ちしながら軽快に跳んで移動していく。
先導はするが後続を待ちも手助けもしない。
変化し続ける地形では行ける所を行ける時に行くしかないのだ。
ノゼアンが団体行動が出来ないわけでは決してない。
驕った態度を見せた者からあの異形の二の舞になる。
…それにしても本当に険しい環境だ。
剣技が通用し難い事を想定して
ノゼアンと僕を遣わせたとしたなら
王の先見の明には恐れ入る。
「あ、また飛んでる奴が!」
此処で面白いのは下は激流なのに対して
空の風の流れは緩やかな点。
なので皮膜で滑空するタイプだと
遅い上に単純に的が大きく、狙い撃ちが容易に可能だ。
同じ様に閃光で貫き撃墜するが
歩み進むにつれてその頻度も増してきた。
「近いのだろうな…」
「さっきから撃ちまくってるけど消耗してねえのか?」
「これくらい問題無いさ。君こそどうだ?」
「むしろ調子良いぜ、体が温まってきた所だ。」
鋭い目付き。憂さ晴らしに殴る理由が欲しかったと思われる。
あの気迫と経歴から、見慣れない者は殴り殺すつもりだろう。
場合によりけりだが僕は止めないし咎めない。
逆に『無明の繭』相手の可能性があるのに
怖じ気つかない点には関心した。
彼が特別鍛えられているのかもしれないが……
だとしても谷の先住民が外部の者に遅れを取ったのが妙だ。
「なんて言うか忘れたが空飛ぶ小型の機械あるだろ。
たまに来るんだが、大体飛んでるだけだが撃ってくる時もある。」
「一般人に兵器を使うとはけしからんね。」
兵器を用いる以上兵隊崩れ級が関わってると見て良いか。
この立地の条件があまりにもよろしくない場に固執する理由…
「流れが激しいだけあって水質が良いんだってよ。
沸かさなくても飲める。
あと色んな物資が流れ着くし
水流で抉られた所から掘り出し物が見つかる事もあるし。
遺物だとか天然資源だとか、まあ小さい『楽園』みたいなもんだ。」
「よく喋るな」
「もうなんも言わねえ!!」
拗ねてしまったようだ。
貶したつもりは毛頭無かったがこれは扱いには気をつけねばなるまい。
コスモ君やタク君とはまた違う稚さが垣間見える。
『最後の楽園』を例えに用いようとしたセンスを褒めようとしたのに。
険しい悪路…土砂崩れが起きやすい脆い地面もあれば
硬くて脆いばかりに整備加工に不向きな岩盤の数々。
足を取られる一方で僕とノゼアンを先頭に後に続く人員も
だいぶ限られる、厳しい状況であった。
「……君の話からある程度敵の像に目星が付いたよ。」
「へえ、一体………オイ何のつもりだてめえ、騙したのか?」
そう言われても仕方がない、話の途中で
彼が振り向いて見えたのが
僕が人差し指を向ける『撃つ』合図であったから。
「騙してなんかいないさ、ホシが空にいるからさ。」
「あ??」
指先から放たれる閃光。
狙った先は、ノゼアンの頭頂部より少し高い角度に飛んでいた
ホシこと異形である。
滑空していた相手の皮膜を貫いた事により
高度は即乱れて堕ち、激流に飲まれる。
「な、なんだよあれ……」
「空飛ぶ異形…もとい異形化した人間。
『無明の繭』でよく見られるタイプだな。
服を着ていたし、流れに対処もできず
何より君も見た事が無いと言うのなら
野生の存在ではないはずだ。」
「巣も餌もない此処で鳥も虫もいやしねえよ。」
「巣ならぬ住まいを作れたのが此処にいた人、先住民なのだろう?
奴等はそこを拠点にしているはずだ。」
「ちっ、『繭』なだけにとんだ寄生虫に目をつけられちまったな。」
舌打ちしながら軽快に跳んで移動していく。
先導はするが後続を待ちも手助けもしない。
変化し続ける地形では行ける所を行ける時に行くしかないのだ。
ノゼアンが団体行動が出来ないわけでは決してない。
驕った態度を見せた者からあの異形の二の舞になる。
…それにしても本当に険しい環境だ。
剣技が通用し難い事を想定して
ノゼアンと僕を遣わせたとしたなら
王の先見の明には恐れ入る。
「あ、また飛んでる奴が!」
此処で面白いのは下は激流なのに対して
空の風の流れは緩やかな点。
なので皮膜で滑空するタイプだと
遅い上に単純に的が大きく、狙い撃ちが容易に可能だ。
同じ様に閃光で貫き撃墜するが
歩み進むにつれてその頻度も増してきた。
「近いのだろうな…」
「さっきから撃ちまくってるけど消耗してねえのか?」
「これくらい問題無いさ。君こそどうだ?」
「むしろ調子良いぜ、体が温まってきた所だ。」
鋭い目付き。憂さ晴らしに殴る理由が欲しかったと思われる。
あの気迫と経歴から、見慣れない者は殴り殺すつもりだろう。
場合によりけりだが僕は止めないし咎めない。
逆に『無明の繭』相手の可能性があるのに
怖じ気つかない点には関心した。
過激な発言と裏腹に息の潜め方は見事なもので……
オパールと同様だと思ったが思うだけに留めよう。
場を乱してはならない。
混乱に乗じて証拠や人質が消されないように、慎重に。
……今僕達はダム湖の横穴の隠れ家前にいる。
廃棄物が溜まりに溜まり、激流をせき止める程積もった人工物による天然の塊。
自然とは言い難いそれがこのダムの正体。
なのでまあ、独特な匂いが風に流されず籠もっている。
手を塞ぐわけにはいかないのだが、何故だろう……
本能的にこの匂いに対して拒絶を示している。
……こちらに背を向けたままノゼアンが手先を動かしている。
何かの合図かとも思ったが…これは指文字か。『ヤク(薬物)』?
通気性の悪い密室での薬物の取り扱いとあらばいただけない。
が、一旦引き返した。作戦会議のためだ。
「は〜、くっせえな?!
ヤクには違いないが初めてのタイプだありゃ。
で、どうすんだ?
正面突破も良いが奥に脱出口が無いとも限らねえ、追い込むのは難しいぜ?」
「地下を掘れる土壌があると思えないな。
窓から飛び立たれる事も一瞬考えたが
奴等同系統ならば風の少ない此処では
助走のための広い道と出口必要なはずで
しかしそれらしき物が見当たらないあたり……
人質を捕った袋小路状態なのだと僕は思う。
想定外の異能が無い事前提の、僕の考えだがな。」
「……………つまりどうしろと」
「正面突破でいい、追い込むのは難しいだろうけどね。」
なんとも言い難い表情で肩を竦める。
出入り口に仲間を配置し、ノゼアンを先頭に侵入。
随分と熱心なものだ。父親のためなのか故郷のためなのか。
後で飲み交わしながらじっくり聞き出したいものだ。
「っ!!」
通路の暗闇の向こう側から何者かが現れた。
そしてその何者かはノゼアンが突き上げた一撃により
首から上、頭部だけ飛んで天井のシミと化したのであった。
残された体を見るに、相手は異形だ。
判った上であの反応速度なら大したものだ……
「そいつは何処から現れた?」
「俺から見て左手側。」
そちらは外観からだと奥行きがなかったような気がしたが。
「俺の勘だが」
「ん?」
「嫌な予感がする。こっちは何故か匂いが途切れている。」
「その勘は正しいと思う。試してみるとするか。」
異形の死骸から片脚を捻りちぎる。
鈍い音が響くが出血を抑えられる分、僕はこのちぎり方が好みだ。
ちぎった脚を通路に放り投げてみた。
「え……消えてる?!」
「こちらの通路は別の空間に繋がっているのだと思う。
異形が来たくらいだ、落とし穴もあったかもな。」
「此処で落とし穴っつったら激流直行じゃねえか?!」
「通気口も兼ねたトラップ、理に適ってるね。」
そうなれば、消去法で反対側通路に向かう他無い。
ただし、今度は僕が先頭で。
「2部屋ある……主犯はどっちだ……」
「錠の無い方さ。自由なのは主側。」
「んな簡単で良いのか?」
「さっきの異形を見る限りだと
手が大きい上に細かい動作ができなさそうだった。
彼等が鍵やらロック解除やらの解錠はしない。」
「んじゃどうやって施錠してんだよ?」
「人間か、異なる体型の異形がいるのかもな。」
片やナンバーロック解除が必要で
片やドアノブを回すだけの、つぎはぎの扉。
聞き耳を立てる……後者側から人気を感じられた。
これはもう間違いない。
この部屋に突入する事に決めた。
オパールと同様だと思ったが思うだけに留めよう。
場を乱してはならない。
混乱に乗じて証拠や人質が消されないように、慎重に。
……今僕達はダム湖の横穴の隠れ家前にいる。
廃棄物が溜まりに溜まり、激流をせき止める程積もった人工物による天然の塊。
自然とは言い難いそれがこのダムの正体。
なのでまあ、独特な匂いが風に流されず籠もっている。
手を塞ぐわけにはいかないのだが、何故だろう……
本能的にこの匂いに対して拒絶を示している。
……こちらに背を向けたままノゼアンが手先を動かしている。
何かの合図かとも思ったが…これは指文字か。『ヤク(薬物)』?
通気性の悪い密室での薬物の取り扱いとあらばいただけない。
が、一旦引き返した。作戦会議のためだ。
「は〜、くっせえな?!
ヤクには違いないが初めてのタイプだありゃ。
で、どうすんだ?
正面突破も良いが奥に脱出口が無いとも限らねえ、追い込むのは難しいぜ?」
「地下を掘れる土壌があると思えないな。
窓から飛び立たれる事も一瞬考えたが
奴等同系統ならば風の少ない此処では
助走のための広い道と出口必要なはずで
しかしそれらしき物が見当たらないあたり……
人質を捕った袋小路状態なのだと僕は思う。
想定外の異能が無い事前提の、僕の考えだがな。」
「……………つまりどうしろと」
「正面突破でいい、追い込むのは難しいだろうけどね。」
なんとも言い難い表情で肩を竦める。
出入り口に仲間を配置し、ノゼアンを先頭に侵入。
随分と熱心なものだ。父親のためなのか故郷のためなのか。
後で飲み交わしながらじっくり聞き出したいものだ。
「っ!!」
通路の暗闇の向こう側から何者かが現れた。
そしてその何者かはノゼアンが突き上げた一撃により
首から上、頭部だけ飛んで天井のシミと化したのであった。
残された体を見るに、相手は異形だ。
判った上であの反応速度なら大したものだ……
「そいつは何処から現れた?」
「俺から見て左手側。」
そちらは外観からだと奥行きがなかったような気がしたが。
「俺の勘だが」
「ん?」
「嫌な予感がする。こっちは何故か匂いが途切れている。」
「その勘は正しいと思う。試してみるとするか。」
異形の死骸から片脚を捻りちぎる。
鈍い音が響くが出血を抑えられる分、僕はこのちぎり方が好みだ。
ちぎった脚を通路に放り投げてみた。
「え……消えてる?!」
「こちらの通路は別の空間に繋がっているのだと思う。
異形が来たくらいだ、落とし穴もあったかもな。」
「此処で落とし穴っつったら激流直行じゃねえか?!」
「通気口も兼ねたトラップ、理に適ってるね。」
そうなれば、消去法で反対側通路に向かう他無い。
ただし、今度は僕が先頭で。
「2部屋ある……主犯はどっちだ……」
「錠の無い方さ。自由なのは主側。」
「んな簡単で良いのか?」
「さっきの異形を見る限りだと
手が大きい上に細かい動作ができなさそうだった。
彼等が鍵やらロック解除やらの解錠はしない。」
「んじゃどうやって施錠してんだよ?」
「人間か、異なる体型の異形がいるのかもな。」
片やナンバーロック解除が必要で
片やドアノブを回すだけの、つぎはぎの扉。
聞き耳を立てる……後者側から人気を感じられた。
これはもう間違いない。
この部屋に突入する事に決めた。
扉を開けた。
異形だらけ時々軍人被れのような者がいる中
何かを庇うように皮膜を大きく立っている異形だけを狙い
土手腹を貫く、太く圧縮された閃光を僕は放った。
「てめぇ?!」
銃火器を構えられたのを見て僕はすぐに扉を閉じた。
幾多もの発砲音と着弾音。
弾が貫通しだしたのを皮切りに扉を壊して取り外す。
「行くぞ、狙う者と抗う者は皆討て!」
「お、おうよ!」
扉を盾に見立ててチャージ(体当たり)……
と見せかけて適当に放り投げ、視界を遮った所で
銃火器や腕を撃ち落としたり撃ち抜いたり。
無力化した所でノゼアンが追撃。
混乱する現場の中、僕は『何か』を抱えて逃げようとする者を追う。
「そこまでだ。」
「ひっ」
相手の後方から襟首を掴み、そのまま全身持ち上げる。
それでも尚しっかり抱えて離さない物……
いや、者であった……!
「貴方は…」
「ブラックスター、そいつ死んだふりしてるぞ!
『札』が付いてる奴は死んでねえって親父が言っていた!」
「だと思った、僕は初めて見たが強い力を感じるよ。
…改めて、貴方は元王子でしょう?
王から聞いた事があります、左頬にわざと付けた一文字の切り傷。」
札を捲ると見える傷痕、毛色と瞳も元国王と同じ。
世界的に見ても一級の国賊、名はゴヨク。
「王だって?けっ、ヒトの住まい侵略したヒト喰いのくせによ。
死に損ないめ。」
「それは貴方もそう、首から下は何処に?」
「決まってんだろ、ギベオンの腹の中だボケ!!」
生首だけなのに威勢が良い。
蒼い文字で書かれた呪いの札により得た、仮初の命。
こんな姿になっても生き長らえたいのか………
「元王子って、どういう事なんだ?」
「『縢りの手』前国の王族さ。だが前国が滅びた元凶でもあるんだ。」
「なっ?!く、国を………?!」
「世界的に見ても一級の国賊、名はゴヨク。」
さすがのノゼアンも驚愕の事件…いや人災であったようだ。
「な、なんでそんな派手な真似したんだ?」
「セプタリアンが、あの野郎が大嫌いで憎かったんだよ!
それなのに国中に好かれるし、あの野郎が作った規律が優先されやがって!
奴の手垢で塗れた国なんてクソ喰らえってな!!」
呆れて声も出ない僕をさし置き
同じく呆れているノゼアンが先に口を開く。
「まあ壊したり奪ったりする方が楽だわな…」
「ケッ、何判ったつもりでいんだ。
てめぇも人食いのくせによ!」
「あ?…あ〜………」
肌を触って思い出したようだ。
そうだ、今の君は青肌スキンパックを付けて
自称食屍鬼ノゼアンだ。
元王子もこれしきの見分けがつかないとは
食屍鬼への理解が浅すぎる…
「…まあある意味ヒトを食ってきた身だから違いねえか。
それで、俺が人食いならてめえはなんだ?
クソ喰いか?」
「んだと?!」
「あんたから羨ましいトコも盗みたいモノも無え。
魅力が無えんだよなあ。」
「クソ青猿が知った風に調子に乗んじゃねえ!!」
「魅力、かどうかはともかく異能は持ってるんじゃないのか?」
ヒートアップする前に割って入り、話題をすり替える。
「細かいカラクリまでは把握していないが
あの空間の幻覚を見せる異能、貴方の力なのだろう?
それを買われて『繭』の下っ端に成り下がった。」
「は?この状態で?」
「異能と一口に言っても幅は広く奥が深いのだよ、ノゼアン。
…だとして、当時のセプタリアン氏を中心に
人々の目を欺き、壊れたままのシェルターを隠蔽したのも貴方だろう?」
減らず口は何処へやら。
今更隠す事でも無いだろうに、口を濁してばかりだ。
「素より縢る手もなく、変化に対応もできない哀れな者よ。
裁定は王に任せる。
くたばれ」
異形だらけ時々軍人被れのような者がいる中
何かを庇うように皮膜を大きく立っている異形だけを狙い
土手腹を貫く、太く圧縮された閃光を僕は放った。
「てめぇ?!」
銃火器を構えられたのを見て僕はすぐに扉を閉じた。
幾多もの発砲音と着弾音。
弾が貫通しだしたのを皮切りに扉を壊して取り外す。
「行くぞ、狙う者と抗う者は皆討て!」
「お、おうよ!」
扉を盾に見立ててチャージ(体当たり)……
と見せかけて適当に放り投げ、視界を遮った所で
銃火器や腕を撃ち落としたり撃ち抜いたり。
無力化した所でノゼアンが追撃。
混乱する現場の中、僕は『何か』を抱えて逃げようとする者を追う。
「そこまでだ。」
「ひっ」
相手の後方から襟首を掴み、そのまま全身持ち上げる。
それでも尚しっかり抱えて離さない物……
いや、者であった……!
「貴方は…」
「ブラックスター、そいつ死んだふりしてるぞ!
『札』が付いてる奴は死んでねえって親父が言っていた!」
「だと思った、僕は初めて見たが強い力を感じるよ。
…改めて、貴方は元王子でしょう?
王から聞いた事があります、左頬にわざと付けた一文字の切り傷。」
札を捲ると見える傷痕、毛色と瞳も元国王と同じ。
世界的に見ても一級の国賊、名はゴヨク。
「王だって?けっ、ヒトの住まい侵略したヒト喰いのくせによ。
死に損ないめ。」
「それは貴方もそう、首から下は何処に?」
「決まってんだろ、ギベオンの腹の中だボケ!!」
生首だけなのに威勢が良い。
蒼い文字で書かれた呪いの札により得た、仮初の命。
こんな姿になっても生き長らえたいのか………
「元王子って、どういう事なんだ?」
「『縢りの手』前国の王族さ。だが前国が滅びた元凶でもあるんだ。」
「なっ?!く、国を………?!」
「世界的に見ても一級の国賊、名はゴヨク。」
さすがのノゼアンも驚愕の事件…いや人災であったようだ。
「な、なんでそんな派手な真似したんだ?」
「セプタリアンが、あの野郎が大嫌いで憎かったんだよ!
それなのに国中に好かれるし、あの野郎が作った規律が優先されやがって!
奴の手垢で塗れた国なんてクソ喰らえってな!!」
呆れて声も出ない僕をさし置き
同じく呆れているノゼアンが先に口を開く。
「まあ壊したり奪ったりする方が楽だわな…」
「ケッ、何判ったつもりでいんだ。
てめぇも人食いのくせによ!」
「あ?…あ〜………」
肌を触って思い出したようだ。
そうだ、今の君は青肌スキンパックを付けて
自称食屍鬼ノゼアンだ。
元王子もこれしきの見分けがつかないとは
食屍鬼への理解が浅すぎる…
「…まあある意味ヒトを食ってきた身だから違いねえか。
それで、俺が人食いならてめえはなんだ?
クソ喰いか?」
「んだと?!」
「あんたから羨ましいトコも盗みたいモノも無え。
魅力が無えんだよなあ。」
「クソ青猿が知った風に調子に乗んじゃねえ!!」
「魅力、かどうかはともかく異能は持ってるんじゃないのか?」
ヒートアップする前に割って入り、話題をすり替える。
「細かいカラクリまでは把握していないが
あの空間の幻覚を見せる異能、貴方の力なのだろう?
それを買われて『繭』の下っ端に成り下がった。」
「は?この状態で?」
「異能と一口に言っても幅は広く奥が深いのだよ、ノゼアン。
…だとして、当時のセプタリアン氏を中心に
人々の目を欺き、壊れたままのシェルターを隠蔽したのも貴方だろう?」
減らず口は何処へやら。
今更隠す事でも無いだろうに、口を濁してばかりだ。
「素より縢る手もなく、変化に対応もできない哀れな者よ。
裁定は王に任せる。
くたばれ」
施錠された部屋には思った通り
難民と先住民が監禁されていた。
毒耐性の強さから劇物を用いる薬物から兵器まで作らされた難民。
人質兼薬物被験者にされ、あられも無い姿で倒れていた先住民。
元王子ゴヨクは此処を拠点に同志と武力を密かに募り
『縢りの手』への襲撃も企てていたらしい。
情報証拠となりそうな端末機器は
文字通り触れた途端に、電源も押していないのにウィルス発動。
内部から破損してしまったので
その話は生存者達の話を統合させたものである。
それにしても……
『こういう時こそアバターの出番では?』
と僕でさえ思っていた矢先に、ローカルながらも堅実なこの対策で
王ことセプタリアン氏がここまで読んでいた上で
ノゼアンを筆頭にした救出作戦だったなら、心から感服致す…
「約束と違うじゃねーか!!」
と、再び枷を付けられながら牢屋で憤慨しているノゼアン。
「解放するとは言ってないじゃないか。
3分の1も減刑してもらったんだぞ?」
「言われねえとわかんねーわ!!
それと、俺は聞いていたからな!
土地与えるとか言っていたくせに
実際貰ったのはてめぇの方じゃねーか!!」
「確かに報酬という形で僕が領土を分け与えてもらったが
僕には領土は必要ない。
君に管理させ、責任だけ僕が担うと言った形で君にやるよ。
変幻谷をな。」
「えっ」
「それとほら、コーリ氏解凍の証拠として
本人から直筆サインと指紋を貰っておいたぞ。
身内である君の確認が済み次第本人と後日面会ができる。」
端末機器で表示された身分証明書を提示。
ノゼアンは食い入る様に見てから、鉄格子の隙間から手を伸ばして
サインと指紋付けを済ます…
「本当に全部持ってきやがったんだな…
あんたは何かいらねえのか?」
「僕はまだ定まっていない、と言った所だ。」
「ちっ、欲の無え奴…」
端末機器をしまい込み、聞き流す…
「…大将の事は聞かねえのか?」
「大将?」
「ウォータードロップを俺はそう呼んで…うわっ?!」
鉄格子に張り付くように迫る俺に引いている。
「……な、なんだよ驚かせやがって。」
「教えてくれ、奴の事。
些細な情報でもいいし、奴の感想でも良い…
何処に惹かれたとか、いくらでも…」
「そ、そんなに気になるのか?」
「僕が愛した人の仇だ。」
思えば今の今まで
奴への復讐心を軸に生きていると言っても過言ではなかった。
放心状態でいた俺に居場所を与え
且つこの復讐心を燃え滾らせたまま
見守り、時に焚べるように力添えをしてくださった
セプタリアン氏に従うのにそれ以上の理由はない。
………奴の事を聞き出す前に
そんな本音をノゼアンの前で吐露してしまった。
僕はこういう時の自分の顔を確認した事ないのだが
なかなか酷い形相をしているらしい。
ノゼアンもドン引きの…ん?
「ゾクゾクしたわ、体の芯に響いたような感覚だったぜ…
イイ顔するじゃねえか…」
高揚した笑みを浮かべている…
「大将があんたに殺されかけたのに
惚れ込んだ訳が判ったかもしれねえ。
…いや、今度からあんたを大将と呼ぶか。」
「なんだって?僕を??」
「仲良くしようや、大将。」
下側から手を広げて見せている…
下でに出ている……
肉刺が目立つ厳つい手、武器を握り続けた証。
「欲に素直な時の顔は一番人格が見えてるもんだ。」
「欲ね……おかしいな、僕はいつもバレないように
こっそり動画や漫画を見漁っていたんだが」
「それは顔じゃなくて音で漏れていたんだが??
あれはわざとじゃなかったのかよ?!」
お互い下品な笑い方をしながら手を取り合う。
ああ、○○。
お前以来の良い人間のパートナーが見つかった気がするよ。
難民と先住民が監禁されていた。
毒耐性の強さから劇物を用いる薬物から兵器まで作らされた難民。
人質兼薬物被験者にされ、あられも無い姿で倒れていた先住民。
元王子ゴヨクは此処を拠点に同志と武力を密かに募り
『縢りの手』への襲撃も企てていたらしい。
情報証拠となりそうな端末機器は
文字通り触れた途端に、電源も押していないのにウィルス発動。
内部から破損してしまったので
その話は生存者達の話を統合させたものである。
それにしても……
『こういう時こそアバターの出番では?』
と僕でさえ思っていた矢先に、ローカルながらも堅実なこの対策で
王ことセプタリアン氏がここまで読んでいた上で
ノゼアンを筆頭にした救出作戦だったなら、心から感服致す…
「約束と違うじゃねーか!!」
と、再び枷を付けられながら牢屋で憤慨しているノゼアン。
「解放するとは言ってないじゃないか。
3分の1も減刑してもらったんだぞ?」
「言われねえとわかんねーわ!!
それと、俺は聞いていたからな!
土地与えるとか言っていたくせに
実際貰ったのはてめぇの方じゃねーか!!」
「確かに報酬という形で僕が領土を分け与えてもらったが
僕には領土は必要ない。
君に管理させ、責任だけ僕が担うと言った形で君にやるよ。
変幻谷をな。」
「えっ」
「それとほら、コーリ氏解凍の証拠として
本人から直筆サインと指紋を貰っておいたぞ。
身内である君の確認が済み次第本人と後日面会ができる。」
端末機器で表示された身分証明書を提示。
ノゼアンは食い入る様に見てから、鉄格子の隙間から手を伸ばして
サインと指紋付けを済ます…
「本当に全部持ってきやがったんだな…
あんたは何かいらねえのか?」
「僕はまだ定まっていない、と言った所だ。」
「ちっ、欲の無え奴…」
端末機器をしまい込み、聞き流す…
「…大将の事は聞かねえのか?」
「大将?」
「ウォータードロップを俺はそう呼んで…うわっ?!」
鉄格子に張り付くように迫る俺に引いている。
「……な、なんだよ驚かせやがって。」
「教えてくれ、奴の事。
些細な情報でもいいし、奴の感想でも良い…
何処に惹かれたとか、いくらでも…」
「そ、そんなに気になるのか?」
「僕が愛した人の仇だ。」
思えば今の今まで
奴への復讐心を軸に生きていると言っても過言ではなかった。
放心状態でいた俺に居場所を与え
且つこの復讐心を燃え滾らせたまま
見守り、時に焚べるように力添えをしてくださった
セプタリアン氏に従うのにそれ以上の理由はない。
………奴の事を聞き出す前に
そんな本音をノゼアンの前で吐露してしまった。
僕はこういう時の自分の顔を確認した事ないのだが
なかなか酷い形相をしているらしい。
ノゼアンもドン引きの…ん?
「ゾクゾクしたわ、体の芯に響いたような感覚だったぜ…
イイ顔するじゃねえか…」
高揚した笑みを浮かべている…
「大将があんたに殺されかけたのに
惚れ込んだ訳が判ったかもしれねえ。
…いや、今度からあんたを大将と呼ぶか。」
「なんだって?僕を??」
「仲良くしようや、大将。」
下側から手を広げて見せている…
下でに出ている……
肉刺が目立つ厳つい手、武器を握り続けた証。
「欲に素直な時の顔は一番人格が見えてるもんだ。」
「欲ね……おかしいな、僕はいつもバレないように
こっそり動画や漫画を見漁っていたんだが」
「それは顔じゃなくて音で漏れていたんだが??
あれはわざとじゃなかったのかよ?!」
お互い下品な笑い方をしながら手を取り合う。
ああ、○○。
お前以来の良い人間のパートナーが見つかった気がするよ。
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