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過激な発言と裏腹に息の潜め方は見事なもので……
オパールと同様だと思ったが思うだけに留めよう。
場を乱してはならない。
混乱に乗じて証拠や人質が消されないように、慎重に。

……今僕達はダム湖の横穴の隠れ家前にいる。
廃棄物が溜まりに溜まり、激流をせき止める程積もった人工物による天然の塊。
自然とは言い難いそれがこのダムの正体。
なのでまあ、独特な匂いが風に流されず籠もっている。
手を塞ぐわけにはいかないのだが、何故だろう……
本能的にこの匂いに対して拒絶を示している。

……こちらに背を向けたままノゼアンが手先を動かしている。
何かの合図かとも思ったが…これは指文字か。『ヤク(薬物)』?
通気性の悪い密室での薬物の取り扱いとあらばいただけない。

が、一旦引き返した。作戦会議のためだ。

「は〜、くっせえな?!
ヤクには違いないが初めてのタイプだありゃ。
で、どうすんだ?
正面突破も良いが奥に脱出口が無いとも限らねえ、追い込むのは難しいぜ?」
「地下を掘れる土壌があると思えないな。
窓から飛び立たれる事も一瞬考えたが
奴等同系統ならば風の少ない此処では
助走のための広い道と出口必要なはずで
しかしそれらしき物が見当たらないあたり……
人質を捕った袋小路状態なのだと僕は思う。
想定外の異能が無い事前提の、僕の考えだがな。」
「……………つまりどうしろと」
「正面突破でいい、追い込むのは難しいだろうけどね。」

なんとも言い難い表情で肩を竦める。



出入り口に仲間を配置し、ノゼアンを先頭に侵入。
随分と熱心なものだ。父親のためなのか故郷のためなのか。
後で飲み交わしながらじっくり聞き出したいものだ。

「っ!!」

通路の暗闇の向こう側から何者かが現れた。
そしてその何者かはノゼアンが突き上げた一撃により
首から上、頭部だけ飛んで天井のシミと化したのであった。
残された体を見るに、相手は異形だ。
判った上であの反応速度なら大したものだ……

「そいつは何処から現れた?」
「俺から見て左手側。」

そちらは外観からだと奥行きがなかったような気がしたが。

「俺の勘だが」
「ん?」
「嫌な予感がする。こっちは何故か匂いが途切れている。」
「その勘は正しいと思う。試してみるとするか。」

異形の死骸から片脚を捻りちぎる。
鈍い音が響くが出血を抑えられる分、僕はこのちぎり方が好みだ。
ちぎった脚を通路に放り投げてみた。

「え……消えてる?!」
「こちらの通路は別の空間に繋がっているのだと思う。
異形が来たくらいだ、落とし穴もあったかもな。」
「此処で落とし穴っつったら激流直行じゃねえか?!」
「通気口も兼ねたトラップ、理に適ってるね。」

そうなれば、消去法で反対側通路に向かう他無い。
ただし、今度は僕が先頭で。

「2部屋ある……主犯はどっちだ……」
「錠の無い方さ。自由なのは主側。」
「んな簡単で良いのか?」
「さっきの異形を見る限りだと
手が大きい上に細かい動作ができなさそうだった。
彼等が鍵やらロック解除やらの解錠はしない。」
「んじゃどうやって施錠してんだよ?」
「人間か、異なる体型の異形がいるのかもな。」

片やナンバーロック解除が必要で
片やドアノブを回すだけの、つぎはぎの扉。
聞き耳を立てる……後者側から人気を感じられた。
これはもう間違いない。
この部屋に突入する事に決めた。
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