蟹〜
ディディはそもそも視えてる世界が違った。
『数値』が複数視えていて
相手、時間、場所によって微妙或いは大幅に異なる。
とある『数値』を書き換えたら異形は消えてしまった···
超常現象のようだが、心当たりはある。
『数値』を一定法則に基づいて変化させ
空間や時間を意のままに操る術者が複数人存在したのを
ハーブウォーターは食屍鬼のみならず過去について知っていた。
ディディにも同様の術の才能がある可能性と
『食屍鬼ならば生きる為に肝心な物=人肉食』
『原理不明だが必須要素であるのは確かで、無いと衰弱死に至る』
事実を告げる···
大いに動揺しるディディ。
人間は『一望の塹壕』にしかいない。
身内は『一望の塹壕』にしかいない。
「食べれるわけがない、それで生きてても寂しい。」
彼にとって『一望の塹壕』が全てである。
嘗ての人類もこうして彼等食屍鬼を
苦悩させ、使い潰し、滅ぼしてしまったのだろう。
だが今度は、今度こそはそうはいかない。
「『数値』について数列や変動に規則があるなら
ディディを救う為の『数値』も存在するかもしれない。」
気休めに伝えただけではない。
そんな都合が良い事、ハッタリにさえ聞こえるが
根拠を言えば『嘗ての賢将達が無策無念のまま絶えるはずがない』
『一望の塹壕をよく見ると不規則に見えて規則性がある数字がある』
せいぜいこの二点か。
ここまで追い詰めてしまった事に負い目を感じつつ
ハーブウォーターは勘付いたあの日から
施設内にディディを助けるモノは何かないかと
あるかも判らぬ手掛かりを必死に探し続け
そして彼を生み出した『母胎』にそのヒントを見つけた。
空になった培養槽、内部から天井をよく見たら
何やら暗号らしき文字列があったが
『時を駆けろ、今を救うなら過去から救われろ
塹壕に散らした○○を当てはめよ』と解読できた。
『時を駆けろ』とは、ディディは実は時を操る異能力者で
先程の異形を何処かに消したように
都合の良い場所···もとい時代、『過去』に移れるのでは?
『○○』は施設内の部屋数と同様で
意味不明なようで意味深であった各部屋の部屋番号を参照して
『数値』に書き換えたら、もしかしたら『過去』に移れるのでは?
···一縷の望みとはいえ、陳腐な提案だが
真剣に語るハーブウォーターをディディは真摯に受け入れる。
この世で最も信頼している人だ、命を預けるに相応しい。
遥か向こう側『基地』にいる者達は
人間の衣食住は補償しても食屍鬼にはしない。
初めてではない異形の襲来に未だに対策がないあたり
人間も衣食住以外の補償があるのか、疑問さえ芽生える。
なので此処に遺された物に賭ける価値は大いにあった。
もしも読みが成功したとして···
のこす言葉にディディは二択を迫られていたが
ハーブウォーターの目を見て決意した。
「いってきます。」
その一言に帰る意志を含ませたディディは
瞬く間に姿を消した。
『過去』というのが彼の助けとなる世代かは判らないが
少なくとも今より人肉にありつける環境は確かだろう。
···ハーブウォーターは一つ、ディディの前で堪えていた事がある。
『食屍鬼は泣かない』正しくは涙を流せない体質なだけで
(個体にもよるが)非情なわけではなく寧ろ情深く
非常事態な時程奮い立たせる存在なのだと言い聞かせてきた。
なので食屍鬼のふりをしてきた手前···
父親であり皆のリーダーという立場も相俟って堪えてきたが
今は大事なものを手放した一人の人間の男として
顔を覆う手を濡らすのであった···
『数値』が複数視えていて
相手、時間、場所によって微妙或いは大幅に異なる。
とある『数値』を書き換えたら異形は消えてしまった···
超常現象のようだが、心当たりはある。
『数値』を一定法則に基づいて変化させ
空間や時間を意のままに操る術者が複数人存在したのを
ハーブウォーターは食屍鬼のみならず過去について知っていた。
ディディにも同様の術の才能がある可能性と
『食屍鬼ならば生きる為に肝心な物=人肉食』
『原理不明だが必須要素であるのは確かで、無いと衰弱死に至る』
事実を告げる···
大いに動揺しるディディ。
人間は『一望の塹壕』にしかいない。
身内は『一望の塹壕』にしかいない。
「食べれるわけがない、それで生きてても寂しい。」
彼にとって『一望の塹壕』が全てである。
嘗ての人類もこうして彼等食屍鬼を
苦悩させ、使い潰し、滅ぼしてしまったのだろう。
だが今度は、今度こそはそうはいかない。
「『数値』について数列や変動に規則があるなら
ディディを救う為の『数値』も存在するかもしれない。」
気休めに伝えただけではない。
そんな都合が良い事、ハッタリにさえ聞こえるが
根拠を言えば『嘗ての賢将達が無策無念のまま絶えるはずがない』
『一望の塹壕をよく見ると不規則に見えて規則性がある数字がある』
せいぜいこの二点か。
ここまで追い詰めてしまった事に負い目を感じつつ
ハーブウォーターは勘付いたあの日から
施設内にディディを助けるモノは何かないかと
あるかも判らぬ手掛かりを必死に探し続け
そして彼を生み出した『母胎』にそのヒントを見つけた。
空になった培養槽、内部から天井をよく見たら
何やら暗号らしき文字列があったが
『時を駆けろ、今を救うなら過去から救われろ
塹壕に散らした○○を当てはめよ』と解読できた。
『時を駆けろ』とは、ディディは実は時を操る異能力者で
先程の異形を何処かに消したように
都合の良い場所···もとい時代、『過去』に移れるのでは?
『○○』は施設内の部屋数と同様で
意味不明なようで意味深であった各部屋の部屋番号を参照して
『数値』に書き換えたら、もしかしたら『過去』に移れるのでは?
···一縷の望みとはいえ、陳腐な提案だが
真剣に語るハーブウォーターをディディは真摯に受け入れる。
この世で最も信頼している人だ、命を預けるに相応しい。
遥か向こう側『基地』にいる者達は
人間の衣食住は補償しても食屍鬼にはしない。
初めてではない異形の襲来に未だに対策がないあたり
人間も衣食住以外の補償があるのか、疑問さえ芽生える。
なので此処に遺された物に賭ける価値は大いにあった。
もしも読みが成功したとして···
のこす言葉にディディは二択を迫られていたが
ハーブウォーターの目を見て決意した。
「いってきます。」
その一言に帰る意志を含ませたディディは
瞬く間に姿を消した。
『過去』というのが彼の助けとなる世代かは判らないが
少なくとも今より人肉にありつける環境は確かだろう。
···ハーブウォーターは一つ、ディディの前で堪えていた事がある。
『食屍鬼は泣かない』正しくは涙を流せない体質なだけで
(個体にもよるが)非情なわけではなく寧ろ情深く
非常事態な時程奮い立たせる存在なのだと言い聞かせてきた。
なので食屍鬼のふりをしてきた手前···
父親であり皆のリーダーという立場も相俟って堪えてきたが
今は大事なものを手放した一人の人間の男として
顔を覆う手を濡らすのであった···
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