蟹〜
此処は常人には辿り着けない領域。
丸腰の単身で進むのは無謀にも程がある。
だが賭けるしかない、『交渉のために異能を奪った』という一言を。
俺の異能『眼界色の扉(オポジットサイド)』は
出先の位置を設定した上で利用をする
異次元への出入口である『平面』を発生させる能力。
此処に侵入するため蓋の役割として出したのは特殊例だ。
「使いこなすのに相当苦労したからね〜……………
価値があると見做されるのは
そりゃ喜ばしい事だけども〜………」
「喜べ、お前も俺の力となる。」
手荒い歓迎であった。
人型住民が勢揃いの中、先頭に立っていたのは…
その肌や毛色には馴染みが…
いや、あまりにも馴染みがありすぎた。
服装も複製魔族特有の制服のようであるが
胴回りと両肘が虚無。
その風貌は正しく語り継がれた死因を思わせる…!
前情報が無ければ訳の判らぬまま
言いくるめられ、運命を変えられていたかもしれない。
妙な説得力の他、何か異様な力を感じる。
逆転させようという『運命の環』の力。
もしもアノーソクレースを外に出してしまったら…
『初代の遺体』として在るようになり
サニディンさんは消滅こそしないが『逆位置の住民』となり
他64人いる同胞の存続にも関わる。
ただ立ち位置が交代するわけではないのだ。
皆サニディンさんをベースに進化や変異をし
64の個性を出して生きてきた。
「世代の違うお前が、過去の亡者に未練があるのか?
職務の一環で遺体を回収しに来ただけだろう?
俺なら彷徨う事も無いが?」
「そんな過去でも無いんだなこれが…
それに彷徨うって事は死後尚
仕事しているって証拠なんだよ。」
切り取ってしまった時空間に引っ張られつつ直し続けている。
それがサニディンの現状。
「色々と大雑把で無責任で困らされたものだけどなあ
死後尚あの人が周囲に与えた影響は多く、広く、深い。」
「それはお前達の空想と偶像だとしてもか?」
「もしかしたら信仰だったりしてね?」
「奴は神ではない。」
「それはあんたもそうだ。
見た目通り、あんたはスカスカだ。
横の繋がりや侠気も無い………」
うっかり口を滑らせた事に今になって気づく。
後ろ盾の存在を匂わせてしまった…!
それ即ち、俺の価値を下げた事を意味し…
「ならばあの亡者のように
孤高の侠気とやらを見せてみよ。」
突如現れた鈍色の剣。
アノーソクレースの千切れた手は
それをしっかり握り、振り回す。
関節が無いため正しく縦横無尽。
かといってこの風を切るような速さと
質量を感じさせる低い音は確かなものである。
『君が死んだらどうなるかな?』
フェルドスパーの無情な一言を思い出す…
まるで動きを誘導されたかのように
一瞬生じた無防備な状態をすかさず突かれ
右腕を切り落とされた。
痛いと感じるのも惜しみ
即座に脇下を強く締め付け止血。
結果的に両腕が塞がる形となった。
異能…異能さえ戻れば片腕がなくても
この場を返せるのだが…
丸腰の単身で進むのは無謀にも程がある。
だが賭けるしかない、『交渉のために異能を奪った』という一言を。
俺の異能『眼界色の扉(オポジットサイド)』は
出先の位置を設定した上で利用をする
異次元への出入口である『平面』を発生させる能力。
此処に侵入するため蓋の役割として出したのは特殊例だ。
「使いこなすのに相当苦労したからね〜……………
価値があると見做されるのは
そりゃ喜ばしい事だけども〜………」
「喜べ、お前も俺の力となる。」
手荒い歓迎であった。
人型住民が勢揃いの中、先頭に立っていたのは…
その肌や毛色には馴染みが…
いや、あまりにも馴染みがありすぎた。
服装も複製魔族特有の制服のようであるが
胴回りと両肘が虚無。
その風貌は正しく語り継がれた死因を思わせる…!
前情報が無ければ訳の判らぬまま
言いくるめられ、運命を変えられていたかもしれない。
妙な説得力の他、何か異様な力を感じる。
逆転させようという『運命の環』の力。
もしもアノーソクレースを外に出してしまったら…
『初代の遺体』として在るようになり
サニディンさんは消滅こそしないが『逆位置の住民』となり
他64人いる同胞の存続にも関わる。
ただ立ち位置が交代するわけではないのだ。
皆サニディンさんをベースに進化や変異をし
64の個性を出して生きてきた。
「世代の違うお前が、過去の亡者に未練があるのか?
職務の一環で遺体を回収しに来ただけだろう?
俺なら彷徨う事も無いが?」
「そんな過去でも無いんだなこれが…
それに彷徨うって事は死後尚
仕事しているって証拠なんだよ。」
切り取ってしまった時空間に引っ張られつつ直し続けている。
それがサニディンの現状。
「色々と大雑把で無責任で困らされたものだけどなあ
死後尚あの人が周囲に与えた影響は多く、広く、深い。」
「それはお前達の空想と偶像だとしてもか?」
「もしかしたら信仰だったりしてね?」
「奴は神ではない。」
「それはあんたもそうだ。
見た目通り、あんたはスカスカだ。
横の繋がりや侠気も無い………」
うっかり口を滑らせた事に今になって気づく。
後ろ盾の存在を匂わせてしまった…!
それ即ち、俺の価値を下げた事を意味し…
「ならばあの亡者のように
孤高の侠気とやらを見せてみよ。」
突如現れた鈍色の剣。
アノーソクレースの千切れた手は
それをしっかり握り、振り回す。
関節が無いため正しく縦横無尽。
かといってこの風を切るような速さと
質量を感じさせる低い音は確かなものである。
『君が死んだらどうなるかな?』
フェルドスパーの無情な一言を思い出す…
まるで動きを誘導されたかのように
一瞬生じた無防備な状態をすかさず突かれ
右腕を切り落とされた。
痛いと感じるのも惜しみ
即座に脇下を強く締め付け止血。
結果的に両腕が塞がる形となった。
異能…異能さえ戻れば片腕がなくても
この場を返せるのだが…
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