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「よぉ、あんたは服着てんだな」
「おい、止せよ…」

黒スーツの男二人組。
不躾に話しかけてきたのは肌色からして人間だが
制止している方は人外。
彼等は見た目だけならベテラン風の
日の浅い『貪』マフィアの組員である。

「なあ、食屍鬼って変態ばかりか?
『愚落』にいた奴も相当だよな?」
「だから止め…」
「っ?!」

男の頭を鷲掴む。
『物理的な』力は入れていない。

「あびっ?!ぃひっ?!」

腕を振り払おうとはしているがまるで力が入っていない。
焦点の合わぬ目、だらしなく泡を吹く。

ターフェアイトは大量の記憶を注入したのだ。
男はそれに堪えきれず精神崩壊を起こした。

「待たせたね、ターフェアイト。」
「本当に待ちましたよ。」

現れたのは一糸纏わぬ堂々たる佇まいの食屍鬼デザートローズ。
『貪』のドンだ。

「私の部下が無礼な真似をしたようだね。
……棄ててこい、その廃人はもう使い物にならん。」
「は、はい!」

人外組員は廃人と化した者を抱えて立ち去った。
残されたのは、食屍鬼二人。

「遥々遠方からようこそ、して何用かな?」
「デザートローズ、貴方薔薇が一つ増えていますね。」
「流石だね、判ったかい?」

衣服は無いが
青薔薇の入れ墨が左肩側を中心に大輪が彫られており
記念事がある度にその数を増やす。

「『薄墨の角』で900人死傷者を出した、その献花さ。」
「少し数が合いませんね。貴方が雑に勘定するのはあり得ない。
死傷者総計896人、4人の行方不明者はどうなさいました?」
「ふふふ、ユークレースに頼まれたのかね。」

双方動じる事もなく、片や無表情で片や笑顔のまま探り合う。

「如何にも、正確には896人。
二人は奴隷として既に売り飛ばしたし、一人は私が抱き潰した。」
「もう一人は?」
「今さっき君が駄目にした。
彼も『それなりに』経歴のある男だったから期待していたのだがね。
私が思っていたより品位も知識も無かったようだ。」
「ふむ、だから棄てたと?」
「愚図ばかり増やしてもユークレースも困るんじゃないのかい?」

社会に外れた者の末路は大体決まっているが、それでも匿う者も存在する。
ユークレースもその一人。

「棄てた人間をどう扱おうが貴方の勝手ですが
ユークレースの真意を勝手に汲み取るのは頂けませんね。」
「ふふ、これは失礼。
しかし直に関係が薄い段階であろうに意外だな。
彼は何が気に掛かったのかね?」
「貴方が騒動を起こした地域はちょうど地質変動が控えている。
部分的砂漠化の可能性が高い地域での無闇な行動は
敵対勢力を大いに刺激するので
均衡を保ちたいなら大人しくするよう勧めていました。」
「なるほど、地殻変動。」

この世界の砂漠は点在した地も含め
デザートローズ等『貪』マフィアの公認の領土。
わざと砂漠化を狙った行為であると誤解を受けようものなら
最寄りの敵対勢力との抗争は避けられないだろう。

「私は誤解されようと一向に構わないが
まあ慌てる必要も無いし要求を呑むとするか。
少々暴れ過ぎた自覚もこれでもあるのだよ?」
「ふん、自覚があるなら定刻に来れたはずでは?」
「興に乗ってしまってついね。
余力があるなら君も相手をしてくれないかい?」
「貴方に割く余力はありません。」
「それは残念。私はまだ世界に届かないか。」
「砂漠が精々です。」
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