蟹〜
【星を見守る翡翠輝石】
木々が並び空が観える…とてもアザルシスと思えない光景。
だが異空間でも無いようだ。異質な美景…
財力でここまで出来るものなのかと思いながら
2人はメイドロボに導かれるまま一軒家に入った。
「ようこそ〜僕の家へ。そして『会うのは』始めまして〜
わあ他の個体と外観のセンスが違くていいね面白〜」
「いや、あんたの独特っぷりには負けるわ」
「オパール!!!!申し訳ございません、とんだ無礼を…」
「面白〜」
珍品や高級品に埋もれるように囲まれており
蕩けるような緩い笑顔で出迎えたのは
四肢の無い食屍鬼モーシッシだ。
「改めて、お誘いどうも。俺がオパールだぜ」
「カルメルタザイトと申します。御指名、ありがとうございました」
「感謝するのは僕の方さ〜。よく僕の話に応えてくれてねぃ
百点満点の仕事ぶりだったよ」
全ては彼の未来視から始まったのだ……
聞けばエニア同伴の元、露店で『これ』を偶然見つけた物がきっかけだ。
「それは…宝珠?!唯一見つかっていなかった…」
「だって僕が買って隠れて調べていたんだもの。
そりゃ見つからないさ〜
あと宝珠なんて称してるけどさ、これ、アンモライト…
正しくはアブが『いる』魔力の塊だよ。」
目をぱちくりさせるオパール。
正体を聞いてもピンと来てないので説明をしよう。
末尾No.52アンモライト…は
実は魔術や軍力を割と好き勝手に駆使しながら
気紛れに破滅を招きたがる『無明の繭』の軍師にて
邪神のアブが寄生している個体である。
アブはほぼ無限に湧き出る肉体の分身がいる。
なのでまあ、九星宝珠は気紛れに商人や人間等に力を与え
気紛れに食屍鬼達を悩ますのを楽しむための
シャレた外装の邪神ミートボールだ。
「あんま詳しく言うとあの国がうるさいから
僕が現状ヤツに語れるのはここまでだよ。」
「そんな、聴かれているわけじゃあるまいし遠慮なんて……
…………まさか聴かれていたんか?」
「大丈夫大丈夫、えっとね……よし。
ザイト〜ここにこの杭打ち込んじゃって」
言われるがまま杭を、『半月』に記した目印に添って打ち込む。
これにより肉塊…細かく言えば脳の機能を一部殺しながら
魔力を今まで同様御利用できるらしい。
「随分都合良く出来るもんだな…」
「ですが、消えたフラグがありましたから確かな効果ですよ」
「お前も大概だったわ」
食屍鬼3人の楽しい答え合わせは続く………
そもそも食屍鬼は、戦地やアウトロー界隈での出番が多く
偽物に起用された者は其処とは無縁の者ばかりで
ウォータードロップは彼等を中心に
食屍鬼を逆撫でするような行為をやらせていたらしい。
大した成果は気にしていない風で……
肝心な食屍鬼が現れた時と、アクアマリンの働きぶりで
唯一強い反応を見せた程度か。
恐らく狙いの本命は別にあり
共謀者以外は初めから切り捨てるつもりで
『地上の星』を結成してみせたのだろう。
「だからって予め摘み取るような行動をしなかったのは正解だよ。
ウォータードロップを討つのはラックの役目さ」
「もしや、ブラックスターさんで?」
「そ、僕の親友。
親友の宿敵だから、炙り出してやりたかったんだ〜♪」
「さっきからとんでもねえ事言ってるなオイ
どんだけ知ってんだよお前……」
「其処に未来がある限りかな?
でもまあ、あいつはもう僕からは
無理に追い詰めて刺激しないようにする。
大人しくさえしてもらえれば良いの。
僕の縄張りは市場だからね、僕ぁ市場のゆるさを護れれば良いんだ」
「そのためにも全食屍鬼の威光がどの層にも伝わるよう
励まなくてはなりませんね!」
「あ、やる気満々なのは良いけど
ジプサムとか細々活動したい個体もいるから程々にね〜」
力む新米を宥める者達。
『地上の星』とは、実は市場が形成された大昔に
一時期呼ばれていたアザルシス市場の通称らしい。
偉大なる大先輩にて末尾No.4食屍鬼ガーネットが
経済の流れをどんな形でも良いから止めるなと…
『経済は流れ続ける血脈であり
粗ぶりも鎮まりもする河川でもあり
客は空で瞬く星で商人は自転する星でもある』
と、エニア会頭の代までは記憶に残るくらい
しつこく何度も飽きられるまで唱えて。
そして誰かが『地上の星』と通称し始めた。
だけども、独立する国が増えて国名の規則が設けられた結果
『地上の星』の呼び名は由来とともに
時代の流れによって、若い世代の記憶から失せてしまった。
それでも、モーシッシは教えと市場を護り続ける為にも
ゆるりと解決してくれそうな
『真赭の尾』二人に未来を見出したのが
今回の、ちょっとした騒動であったのだ……
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