蟹〜
カコの出張期間も終わり
地元アザルシスに戻ってから即大枚叩いて
知識人こと竜王ユークレースさんを呼んでもらい
異世界アルカナの逆位置で起きた事を洗いざらい話し
カード化のための術式確立を求めた。
「可能ですか?」
「可能だよ、ビスマスの異能の応用と思えば。
無限小矩形の概念をベースに相対性理論の………」
「ま、待ってください待ってください!
メモ取りながら聞かせてください!」
即超難解式を閃いて口にするからこの人は本当恐ろしい。
記録を残さぬまま埋もれた幻の式も数知れず。
天才ってこういう所あるよな………
サニディンさんを迎えに行っただけなのに
こんな大事になるなんて……
でも自然と口角が上がっているのが判る。
多忙には違いないけど確かに進展はあったし
何より味方が増えた実感がある事に
俺は喜びを感じているのだと思う。
勤めた当初は名前だけで顔も判らぬ大先輩が
遺し、或いは増やし続けた
訳の解らない仕事や超常現象を解決したり避けたりの
しんどい日々が続くばかりだった。
正直サニディンという個体の存在も
疑っていたくらいだ。
理屈で判っていても不器用な手先は
なかなか想いを出力してくれず
何故できないのかと、自分でも答えられないのに
知識人?ターフェアイトさんに責められる事多数…
とある日。
俺は一枚選んでみた。
輝く小さな平面…
其処から飛び出した人影は
滑らかな長い銀髪と整った顔としなやかなフォルムが美しい
あの女性であった。
「貴方はっ!たしかアレキサンドライトさんでしたよね?!」
「説明してくださる?私は今どういう状態なのかしら?」
「はい、貴方は今俺が作り出した異能のカードから出て実像化した存在です。
役目を果たしたら意識は即元に戻ります。
貴方の本体に記憶や触れた感触等は被害は及びません。」
「貴方が先日私等に許可取りをした行為がこれなの?」
「そうです。
ちなみに公平性と効力の関係上選出はランダムに
一人ずつにさせていただきました。」
「私達の拒否権は?」
「2回目以降ならあります。
……えーと他にはあります?」
「そうね、他の人の反応が見たいわ。
積極的に使って皆に貴方と同じ世界を見せなさい。」
「………はい!」
優しい笑みを頂いた。
こうして俺は新たに開発した異能『逆位置からの扉(リバーサイド)』で
アルカナ逆位置の住民との信頼と
サニディンさんとの繋がりを得たのだった。
さあどんどん片付けるぞ、書類という平面を……!
地元アザルシスに戻ってから即大枚叩いて
知識人こと竜王ユークレースさんを呼んでもらい
異世界アルカナの逆位置で起きた事を洗いざらい話し
カード化のための術式確立を求めた。
「可能ですか?」
「可能だよ、ビスマスの異能の応用と思えば。
無限小矩形の概念をベースに相対性理論の………」
「ま、待ってください待ってください!
メモ取りながら聞かせてください!」
即超難解式を閃いて口にするからこの人は本当恐ろしい。
記録を残さぬまま埋もれた幻の式も数知れず。
天才ってこういう所あるよな………
サニディンさんを迎えに行っただけなのに
こんな大事になるなんて……
でも自然と口角が上がっているのが判る。
多忙には違いないけど確かに進展はあったし
何より味方が増えた実感がある事に
俺は喜びを感じているのだと思う。
勤めた当初は名前だけで顔も判らぬ大先輩が
遺し、或いは増やし続けた
訳の解らない仕事や超常現象を解決したり避けたりの
しんどい日々が続くばかりだった。
正直サニディンという個体の存在も
疑っていたくらいだ。
理屈で判っていても不器用な手先は
なかなか想いを出力してくれず
何故できないのかと、自分でも答えられないのに
知識人?ターフェアイトさんに責められる事多数…
とある日。
俺は一枚選んでみた。
輝く小さな平面…
其処から飛び出した人影は
滑らかな長い銀髪と整った顔としなやかなフォルムが美しい
あの女性であった。
「貴方はっ!たしかアレキサンドライトさんでしたよね?!」
「説明してくださる?私は今どういう状態なのかしら?」
「はい、貴方は今俺が作り出した異能のカードから出て実像化した存在です。
役目を果たしたら意識は即元に戻ります。
貴方の本体に記憶や触れた感触等は被害は及びません。」
「貴方が先日私等に許可取りをした行為がこれなの?」
「そうです。
ちなみに公平性と効力の関係上選出はランダムに
一人ずつにさせていただきました。」
「私達の拒否権は?」
「2回目以降ならあります。
……えーと他にはあります?」
「そうね、他の人の反応が見たいわ。
積極的に使って皆に貴方と同じ世界を見せなさい。」
「………はい!」
優しい笑みを頂いた。
こうして俺は新たに開発した異能『逆位置からの扉(リバーサイド)』で
アルカナ逆位置の住民との信頼と
サニディンさんとの繋がりを得たのだった。
さあどんどん片付けるぞ、書類という平面を……!
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「…本当に挨拶して行かなくてよかったんです?」
「馬鹿野郎、女々しい事言ってんじゃねーよ。
レコはそういうキャラじゃねえし
カコは意味判らんで戸惑うだけだし
博士には踏ん切り付けてもらいてえし
死人に口無し、だ。」
「そ、そういうもんなんですか?」
「そういうもんだ。」
ふんぞり返るサニディンさん。
試行回数3桁でようやくタロット引いて出てくれたので
部署に戻る時間も惜しくてワンルームを借りて
書類や資料をまとめていたのだけど……
量は勿論だけどサニディンさんがこの調子なので
通常の100倍疲れる……
休憩がてら何気なく尋ねた事への返答がコレだし。
「それに…」
「それに?」
「あいつが妬くからな。」
視線に釣られて窓の方を見る。
窓枠にカラスが止まっていた。
「死人を差し置いて生者に顔合わせしたらグアノは絶対根に持つ。
あいつ、ねちっこいんだよ。」
「は?グアノさん?」
サニディンさんの同僚のあの?
カラスとどういう関係が?
確かにあの人も亡くなった人ではあるけども。
「ところで、タロットカード案だが俺は当初から想定していた。」
「さっき聞きましたよ。」
「良いから聞け。で、ビス。
お前、こういう仕様にしたのは住民どもを楽しませる一方で
俺を体よく留めるために設計したな?」
「え、ええまあ。」
「再現のための出力を叶えるためには
一度に一人召喚にしたわけだ。」
「あ、はい。」
「ダンビュライトに気をつけろ。」
「は?」
数あるアルカナの猛者から
(言ってはなんだが)地味なチョイスだな?
推すくらいお気に入りのヒトか?
「さて十分駄弁を弄しただろ?再開しろ。」
「え、今飯の出前頼もうと……」
「再開しろ。」
「ダンビュライトさんより強引だな?!
俺は生きてるから飯食わないといけないんですよ?!」
「一食くらい抜いちまえよ。」
「食いながらは?」
「ざけんな」
「厳し過ぎるうう!!一食どころか今既に二食まだなのに!!」
悪い笑顔でこの人は……
また俺を弄り倒す人が増えてしまったな……
「馬鹿野郎、女々しい事言ってんじゃねーよ。
レコはそういうキャラじゃねえし
カコは意味判らんで戸惑うだけだし
博士には踏ん切り付けてもらいてえし
死人に口無し、だ。」
「そ、そういうもんなんですか?」
「そういうもんだ。」
ふんぞり返るサニディンさん。
試行回数3桁でようやくタロット引いて出てくれたので
部署に戻る時間も惜しくてワンルームを借りて
書類や資料をまとめていたのだけど……
量は勿論だけどサニディンさんがこの調子なので
通常の100倍疲れる……
休憩がてら何気なく尋ねた事への返答がコレだし。
「それに…」
「それに?」
「あいつが妬くからな。」
視線に釣られて窓の方を見る。
窓枠にカラスが止まっていた。
「死人を差し置いて生者に顔合わせしたらグアノは絶対根に持つ。
あいつ、ねちっこいんだよ。」
「は?グアノさん?」
サニディンさんの同僚のあの?
カラスとどういう関係が?
確かにあの人も亡くなった人ではあるけども。
「ところで、タロットカード案だが俺は当初から想定していた。」
「さっき聞きましたよ。」
「良いから聞け。で、ビス。
お前、こういう仕様にしたのは住民どもを楽しませる一方で
俺を体よく留めるために設計したな?」
「え、ええまあ。」
「再現のための出力を叶えるためには
一度に一人召喚にしたわけだ。」
「あ、はい。」
「ダンビュライトに気をつけろ。」
「は?」
数あるアルカナの猛者から
(言ってはなんだが)地味なチョイスだな?
推すくらいお気に入りのヒトか?
「さて十分駄弁を弄しただろ?再開しろ。」
「え、今飯の出前頼もうと……」
「再開しろ。」
「ダンビュライトさんより強引だな?!
俺は生きてるから飯食わないといけないんですよ?!」
「一食くらい抜いちまえよ。」
「食いながらは?」
「ざけんな」
「厳し過ぎるうう!!一食どころか今既に二食まだなのに!!」
悪い笑顔でこの人は……
また俺を弄り倒す人が増えてしまったな……
「最近はあんたがよく顔を出すようになったんだな。」
「王が君にそんなに会いに来ていたのかね?」
指差す方に視線を見遣ると、極細の鮮やかな針が数本落ちているのが判った。
それは王ことセプタリアンの体から髪の毛の様に抜け落ちる毒針である。
これくらい細い物だと虫刺され程度の毒性しかなくほぼ無害。
ちなみに針は細くて脆く、ピッキングには向かない。
その点だけは安心して良い。
…が、問題はそうではなく。
抜け針の量からして僕の想定よりも頻繁に訪問していたようだ。
一国の王が、罪人のいる牢屋の前にだ。
「聞きてえのは俺の方だ、俺がなんか珍しいのか?」
「それはどうかな」
「ちっ、同じ顔で同じ台詞言いやがって……」
この青年は…今はノゼアンと呼ぼうか。
人間だが青肌スキンパックを付けて食屍鬼を自称している。
(尚、魔術の一環で自力でパックは外せない。)
そう、我々複製の食屍鬼とは種族からして違うのだ。
生まれも……
「飯の時間もバラバラでここにいると時間の感覚が狂っちまうや。
外じゃあ何が起きているんだ?」
「めでたくない事ばかりさ。」
「例えば?」
「行方不明者、おそらくは難民化した者が2割からなかなか変動しない事とか。」
「へっ、あんた等が喰った量じゃねえの?」
「僕達は飯の時間と量はきっちりしている方でね。
だから特定に困っている。」
煽った側が軽く舌打ち。
人間の不明者が現れると人食い種である食屍鬼が疑われやすい。
そうでもないと言い切れる理解者は近年増加しつつあるが
やはり固定概念は拭えないし、かといって否定もしきれない。
「変わらないモノなんてねえんだよ。
俺がガキの頃過ごしたみてえに」
「此処より南西側とは聞いたが
君も素性がはっきり判らんのだよな」
「俺が俺自身判ってねえし当たり前だろ?!」
彼は捨て子だ。生まれて間もない状態で拾われた。
育て親が人間屈指の盗賊と、食屍鬼屈指の策士という。
ノゼアンは賊のハイブリッド…
「お陰様でしぶとく生き延びれるようにはなったけどよ。
災害ばっかりで地形がしょっちゅう変わるから
よそ者は来ねえし、悪いことしても逃げ隠れし放題。」
「足腰が強いわけだ。」
獣のようだに、と言いかけたのは飲み込んだが
逆に核心突く事を吐いてみた。
「……変幻谷育ちか。」
「なんだ、知ってんのかよ。
都会育ちと縁がないと思っていたのに。」
「以前まではそうだったが今はそうもいかない。
『旭輝の掌』の領土圏内に認定されたんだ。」
「ぅん?」
「そこを拠点にし、難民を無給の労働力
所謂奴隷化している輩がいるとの話がある。」
「…『旭輝』の奴が囚われてるってか?」
「細かく言えば『旭輝の掌』になる以前の国の者。
それと変幻谷の先住民が対象だ。」
「んだと………」
目の色が変わってきた。
なるほど、そういう事か。
「見せしめのつもりか?俺にそんな話ふっかけて」
「難民救出にあたって君の力を借りたい。君の力が必要だ。」
目を丸くし、呆気にとられた様子。
なんとも表情豊かな。
「は?俺に?」
「君の身のこなしと経験値への評価は折り紙付きだよ。」
「別に嬉しかねーな、それに手助けした所で俺が得する事が無えし。」
「言い換えよう。王は武人だ、武人として君を評した。
評価に見合う報酬も当然用意する。
減刑、褒賞金、その他君のリクエストに応える等。」
食い付いてきたのが判る。
そして肝心な事は僕は暈し、ノゼアンに言わせた。
「リクエストかよ、土地寄越せっつったら寄越すのか?」
「可能だ。」
「親父を返せつったら返すのか?」
「可能だ。例の件を聞いてから王が即身柄を確保したからな。」
「マジかよ………」
育て親に未練があったのか判らなかったが、これではっきりした。
冷凍保存された育て親の行方……生存確認できれば良し
死亡即ち食屍鬼による捕食と見て、全個体対象に仇討ちも良し。
そんな所だろう。
「やるか?やるなら3日後には発つぞ。
体が鈍っているんじゃないか?」
「悠長な事言ってねえで、明日からでも構わんぞ俺は。
変幻谷育ちは変化に対応できる奴だ。」
「王が君にそんなに会いに来ていたのかね?」
指差す方に視線を見遣ると、極細の鮮やかな針が数本落ちているのが判った。
それは王ことセプタリアンの体から髪の毛の様に抜け落ちる毒針である。
これくらい細い物だと虫刺され程度の毒性しかなくほぼ無害。
ちなみに針は細くて脆く、ピッキングには向かない。
その点だけは安心して良い。
…が、問題はそうではなく。
抜け針の量からして僕の想定よりも頻繁に訪問していたようだ。
一国の王が、罪人のいる牢屋の前にだ。
「聞きてえのは俺の方だ、俺がなんか珍しいのか?」
「それはどうかな」
「ちっ、同じ顔で同じ台詞言いやがって……」
この青年は…今はノゼアンと呼ぼうか。
人間だが青肌スキンパックを付けて食屍鬼を自称している。
(尚、魔術の一環で自力でパックは外せない。)
そう、我々複製の食屍鬼とは種族からして違うのだ。
生まれも……
「飯の時間もバラバラでここにいると時間の感覚が狂っちまうや。
外じゃあ何が起きているんだ?」
「めでたくない事ばかりさ。」
「例えば?」
「行方不明者、おそらくは難民化した者が2割からなかなか変動しない事とか。」
「へっ、あんた等が喰った量じゃねえの?」
「僕達は飯の時間と量はきっちりしている方でね。
だから特定に困っている。」
煽った側が軽く舌打ち。
人間の不明者が現れると人食い種である食屍鬼が疑われやすい。
そうでもないと言い切れる理解者は近年増加しつつあるが
やはり固定概念は拭えないし、かといって否定もしきれない。
「変わらないモノなんてねえんだよ。
俺がガキの頃過ごしたみてえに」
「此処より南西側とは聞いたが
君も素性がはっきり判らんのだよな」
「俺が俺自身判ってねえし当たり前だろ?!」
彼は捨て子だ。生まれて間もない状態で拾われた。
育て親が人間屈指の盗賊と、食屍鬼屈指の策士という。
ノゼアンは賊のハイブリッド…
「お陰様でしぶとく生き延びれるようにはなったけどよ。
災害ばっかりで地形がしょっちゅう変わるから
よそ者は来ねえし、悪いことしても逃げ隠れし放題。」
「足腰が強いわけだ。」
獣のようだに、と言いかけたのは飲み込んだが
逆に核心突く事を吐いてみた。
「……変幻谷育ちか。」
「なんだ、知ってんのかよ。
都会育ちと縁がないと思っていたのに。」
「以前まではそうだったが今はそうもいかない。
『旭輝の掌』の領土圏内に認定されたんだ。」
「ぅん?」
「そこを拠点にし、難民を無給の労働力
所謂奴隷化している輩がいるとの話がある。」
「…『旭輝』の奴が囚われてるってか?」
「細かく言えば『旭輝の掌』になる以前の国の者。
それと変幻谷の先住民が対象だ。」
「んだと………」
目の色が変わってきた。
なるほど、そういう事か。
「見せしめのつもりか?俺にそんな話ふっかけて」
「難民救出にあたって君の力を借りたい。君の力が必要だ。」
目を丸くし、呆気にとられた様子。
なんとも表情豊かな。
「は?俺に?」
「君の身のこなしと経験値への評価は折り紙付きだよ。」
「別に嬉しかねーな、それに手助けした所で俺が得する事が無えし。」
「言い換えよう。王は武人だ、武人として君を評した。
評価に見合う報酬も当然用意する。
減刑、褒賞金、その他君のリクエストに応える等。」
食い付いてきたのが判る。
そして肝心な事は僕は暈し、ノゼアンに言わせた。
「リクエストかよ、土地寄越せっつったら寄越すのか?」
「可能だ。」
「親父を返せつったら返すのか?」
「可能だ。例の件を聞いてから王が即身柄を確保したからな。」
「マジかよ………」
育て親に未練があったのか判らなかったが、これではっきりした。
冷凍保存された育て親の行方……生存確認できれば良し
死亡即ち食屍鬼による捕食と見て、全個体対象に仇討ちも良し。
そんな所だろう。
「やるか?やるなら3日後には発つぞ。
体が鈍っているんじゃないか?」
「悠長な事言ってねえで、明日からでも構わんぞ俺は。
変幻谷育ちは変化に対応できる奴だ。」
我々が思っていた以上にノゼアンはタフネスである。
彼が特別鍛えられているのかもしれないが……
だとしても谷の先住民が外部の者に遅れを取ったのが妙だ。
「なんて言うか忘れたが空飛ぶ小型の機械あるだろ。
たまに来るんだが、大体飛んでるだけだが撃ってくる時もある。」
「一般人に兵器を使うとはけしからんね。」
兵器を用いる以上兵隊崩れ級が関わってると見て良いか。
この立地の条件があまりにもよろしくない場に固執する理由…
「流れが激しいだけあって水質が良いんだってよ。
沸かさなくても飲める。
あと色んな物資が流れ着くし
水流で抉られた所から掘り出し物が見つかる事もあるし。
遺物だとか天然資源だとか、まあ小さい『楽園』みたいなもんだ。」
「よく喋るな」
「もうなんも言わねえ!!」
拗ねてしまったようだ。
貶したつもりは毛頭無かったがこれは扱いには気をつけねばなるまい。
コスモ君やタク君とはまた違う稚さが垣間見える。
『最後の楽園』を例えに用いようとしたセンスを褒めようとしたのに。
険しい悪路…土砂崩れが起きやすい脆い地面もあれば
硬くて脆いばかりに整備加工に不向きな岩盤の数々。
足を取られる一方で僕とノゼアンを先頭に後に続く人員も
だいぶ限られる、厳しい状況であった。
「……君の話からある程度敵の像に目星が付いたよ。」
「へえ、一体………オイ何のつもりだてめえ、騙したのか?」
そう言われても仕方がない、話の途中で
彼が振り向いて見えたのが
僕が人差し指を向ける『撃つ』合図であったから。
「騙してなんかいないさ、ホシが空にいるからさ。」
「あ??」
指先から放たれる閃光。
狙った先は、ノゼアンの頭頂部より少し高い角度に飛んでいた
ホシこと異形である。
滑空していた相手の皮膜を貫いた事により
高度は即乱れて堕ち、激流に飲まれる。
「な、なんだよあれ……」
「空飛ぶ異形…もとい異形化した人間。
『無明の繭』でよく見られるタイプだな。
服を着ていたし、流れに対処もできず
何より君も見た事が無いと言うのなら
野生の存在ではないはずだ。」
「巣も餌もない此処で鳥も虫もいやしねえよ。」
「巣ならぬ住まいを作れたのが此処にいた人、先住民なのだろう?
奴等はそこを拠点にしているはずだ。」
「ちっ、『繭』なだけにとんだ寄生虫に目をつけられちまったな。」
舌打ちしながら軽快に跳んで移動していく。
先導はするが後続を待ちも手助けもしない。
変化し続ける地形では行ける所を行ける時に行くしかないのだ。
ノゼアンが団体行動が出来ないわけでは決してない。
驕った態度を見せた者からあの異形の二の舞になる。
…それにしても本当に険しい環境だ。
剣技が通用し難い事を想定して
ノゼアンと僕を遣わせたとしたなら
王の先見の明には恐れ入る。
「あ、また飛んでる奴が!」
此処で面白いのは下は激流なのに対して
空の風の流れは緩やかな点。
なので皮膜で滑空するタイプだと
遅い上に単純に的が大きく、狙い撃ちが容易に可能だ。
同じ様に閃光で貫き撃墜するが
歩み進むにつれてその頻度も増してきた。
「近いのだろうな…」
「さっきから撃ちまくってるけど消耗してねえのか?」
「これくらい問題無いさ。君こそどうだ?」
「むしろ調子良いぜ、体が温まってきた所だ。」
鋭い目付き。憂さ晴らしに殴る理由が欲しかったと思われる。
あの気迫と経歴から、見慣れない者は殴り殺すつもりだろう。
場合によりけりだが僕は止めないし咎めない。
逆に『無明の繭』相手の可能性があるのに
怖じ気つかない点には関心した。
彼が特別鍛えられているのかもしれないが……
だとしても谷の先住民が外部の者に遅れを取ったのが妙だ。
「なんて言うか忘れたが空飛ぶ小型の機械あるだろ。
たまに来るんだが、大体飛んでるだけだが撃ってくる時もある。」
「一般人に兵器を使うとはけしからんね。」
兵器を用いる以上兵隊崩れ級が関わってると見て良いか。
この立地の条件があまりにもよろしくない場に固執する理由…
「流れが激しいだけあって水質が良いんだってよ。
沸かさなくても飲める。
あと色んな物資が流れ着くし
水流で抉られた所から掘り出し物が見つかる事もあるし。
遺物だとか天然資源だとか、まあ小さい『楽園』みたいなもんだ。」
「よく喋るな」
「もうなんも言わねえ!!」
拗ねてしまったようだ。
貶したつもりは毛頭無かったがこれは扱いには気をつけねばなるまい。
コスモ君やタク君とはまた違う稚さが垣間見える。
『最後の楽園』を例えに用いようとしたセンスを褒めようとしたのに。
険しい悪路…土砂崩れが起きやすい脆い地面もあれば
硬くて脆いばかりに整備加工に不向きな岩盤の数々。
足を取られる一方で僕とノゼアンを先頭に後に続く人員も
だいぶ限られる、厳しい状況であった。
「……君の話からある程度敵の像に目星が付いたよ。」
「へえ、一体………オイ何のつもりだてめえ、騙したのか?」
そう言われても仕方がない、話の途中で
彼が振り向いて見えたのが
僕が人差し指を向ける『撃つ』合図であったから。
「騙してなんかいないさ、ホシが空にいるからさ。」
「あ??」
指先から放たれる閃光。
狙った先は、ノゼアンの頭頂部より少し高い角度に飛んでいた
ホシこと異形である。
滑空していた相手の皮膜を貫いた事により
高度は即乱れて堕ち、激流に飲まれる。
「な、なんだよあれ……」
「空飛ぶ異形…もとい異形化した人間。
『無明の繭』でよく見られるタイプだな。
服を着ていたし、流れに対処もできず
何より君も見た事が無いと言うのなら
野生の存在ではないはずだ。」
「巣も餌もない此処で鳥も虫もいやしねえよ。」
「巣ならぬ住まいを作れたのが此処にいた人、先住民なのだろう?
奴等はそこを拠点にしているはずだ。」
「ちっ、『繭』なだけにとんだ寄生虫に目をつけられちまったな。」
舌打ちしながら軽快に跳んで移動していく。
先導はするが後続を待ちも手助けもしない。
変化し続ける地形では行ける所を行ける時に行くしかないのだ。
ノゼアンが団体行動が出来ないわけでは決してない。
驕った態度を見せた者からあの異形の二の舞になる。
…それにしても本当に険しい環境だ。
剣技が通用し難い事を想定して
ノゼアンと僕を遣わせたとしたなら
王の先見の明には恐れ入る。
「あ、また飛んでる奴が!」
此処で面白いのは下は激流なのに対して
空の風の流れは緩やかな点。
なので皮膜で滑空するタイプだと
遅い上に単純に的が大きく、狙い撃ちが容易に可能だ。
同じ様に閃光で貫き撃墜するが
歩み進むにつれてその頻度も増してきた。
「近いのだろうな…」
「さっきから撃ちまくってるけど消耗してねえのか?」
「これくらい問題無いさ。君こそどうだ?」
「むしろ調子良いぜ、体が温まってきた所だ。」
鋭い目付き。憂さ晴らしに殴る理由が欲しかったと思われる。
あの気迫と経歴から、見慣れない者は殴り殺すつもりだろう。
場合によりけりだが僕は止めないし咎めない。
逆に『無明の繭』相手の可能性があるのに
怖じ気つかない点には関心した。
過激な発言と裏腹に息の潜め方は見事なもので……
オパールと同様だと思ったが思うだけに留めよう。
場を乱してはならない。
混乱に乗じて証拠や人質が消されないように、慎重に。
……今僕達はダム湖の横穴の隠れ家前にいる。
廃棄物が溜まりに溜まり、激流をせき止める程積もった人工物による天然の塊。
自然とは言い難いそれがこのダムの正体。
なのでまあ、独特な匂いが風に流されず籠もっている。
手を塞ぐわけにはいかないのだが、何故だろう……
本能的にこの匂いに対して拒絶を示している。
……こちらに背を向けたままノゼアンが手先を動かしている。
何かの合図かとも思ったが…これは指文字か。『ヤク(薬物)』?
通気性の悪い密室での薬物の取り扱いとあらばいただけない。
が、一旦引き返した。作戦会議のためだ。
「は〜、くっせえな?!
ヤクには違いないが初めてのタイプだありゃ。
で、どうすんだ?
正面突破も良いが奥に脱出口が無いとも限らねえ、追い込むのは難しいぜ?」
「地下を掘れる土壌があると思えないな。
窓から飛び立たれる事も一瞬考えたが
奴等同系統ならば風の少ない此処では
助走のための広い道と出口必要なはずで
しかしそれらしき物が見当たらないあたり……
人質を捕った袋小路状態なのだと僕は思う。
想定外の異能が無い事前提の、僕の考えだがな。」
「……………つまりどうしろと」
「正面突破でいい、追い込むのは難しいだろうけどね。」
なんとも言い難い表情で肩を竦める。
出入り口に仲間を配置し、ノゼアンを先頭に侵入。
随分と熱心なものだ。父親のためなのか故郷のためなのか。
後で飲み交わしながらじっくり聞き出したいものだ。
「っ!!」
通路の暗闇の向こう側から何者かが現れた。
そしてその何者かはノゼアンが突き上げた一撃により
首から上、頭部だけ飛んで天井のシミと化したのであった。
残された体を見るに、相手は異形だ。
判った上であの反応速度なら大したものだ……
「そいつは何処から現れた?」
「俺から見て左手側。」
そちらは外観からだと奥行きがなかったような気がしたが。
「俺の勘だが」
「ん?」
「嫌な予感がする。こっちは何故か匂いが途切れている。」
「その勘は正しいと思う。試してみるとするか。」
異形の死骸から片脚を捻りちぎる。
鈍い音が響くが出血を抑えられる分、僕はこのちぎり方が好みだ。
ちぎった脚を通路に放り投げてみた。
「え……消えてる?!」
「こちらの通路は別の空間に繋がっているのだと思う。
異形が来たくらいだ、落とし穴もあったかもな。」
「此処で落とし穴っつったら激流直行じゃねえか?!」
「通気口も兼ねたトラップ、理に適ってるね。」
そうなれば、消去法で反対側通路に向かう他無い。
ただし、今度は僕が先頭で。
「2部屋ある……主犯はどっちだ……」
「錠の無い方さ。自由なのは主側。」
「んな簡単で良いのか?」
「さっきの異形を見る限りだと
手が大きい上に細かい動作ができなさそうだった。
彼等が鍵やらロック解除やらの解錠はしない。」
「んじゃどうやって施錠してんだよ?」
「人間か、異なる体型の異形がいるのかもな。」
片やナンバーロック解除が必要で
片やドアノブを回すだけの、つぎはぎの扉。
聞き耳を立てる……後者側から人気を感じられた。
これはもう間違いない。
この部屋に突入する事に決めた。
オパールと同様だと思ったが思うだけに留めよう。
場を乱してはならない。
混乱に乗じて証拠や人質が消されないように、慎重に。
……今僕達はダム湖の横穴の隠れ家前にいる。
廃棄物が溜まりに溜まり、激流をせき止める程積もった人工物による天然の塊。
自然とは言い難いそれがこのダムの正体。
なのでまあ、独特な匂いが風に流されず籠もっている。
手を塞ぐわけにはいかないのだが、何故だろう……
本能的にこの匂いに対して拒絶を示している。
……こちらに背を向けたままノゼアンが手先を動かしている。
何かの合図かとも思ったが…これは指文字か。『ヤク(薬物)』?
通気性の悪い密室での薬物の取り扱いとあらばいただけない。
が、一旦引き返した。作戦会議のためだ。
「は〜、くっせえな?!
ヤクには違いないが初めてのタイプだありゃ。
で、どうすんだ?
正面突破も良いが奥に脱出口が無いとも限らねえ、追い込むのは難しいぜ?」
「地下を掘れる土壌があると思えないな。
窓から飛び立たれる事も一瞬考えたが
奴等同系統ならば風の少ない此処では
助走のための広い道と出口必要なはずで
しかしそれらしき物が見当たらないあたり……
人質を捕った袋小路状態なのだと僕は思う。
想定外の異能が無い事前提の、僕の考えだがな。」
「……………つまりどうしろと」
「正面突破でいい、追い込むのは難しいだろうけどね。」
なんとも言い難い表情で肩を竦める。
出入り口に仲間を配置し、ノゼアンを先頭に侵入。
随分と熱心なものだ。父親のためなのか故郷のためなのか。
後で飲み交わしながらじっくり聞き出したいものだ。
「っ!!」
通路の暗闇の向こう側から何者かが現れた。
そしてその何者かはノゼアンが突き上げた一撃により
首から上、頭部だけ飛んで天井のシミと化したのであった。
残された体を見るに、相手は異形だ。
判った上であの反応速度なら大したものだ……
「そいつは何処から現れた?」
「俺から見て左手側。」
そちらは外観からだと奥行きがなかったような気がしたが。
「俺の勘だが」
「ん?」
「嫌な予感がする。こっちは何故か匂いが途切れている。」
「その勘は正しいと思う。試してみるとするか。」
異形の死骸から片脚を捻りちぎる。
鈍い音が響くが出血を抑えられる分、僕はこのちぎり方が好みだ。
ちぎった脚を通路に放り投げてみた。
「え……消えてる?!」
「こちらの通路は別の空間に繋がっているのだと思う。
異形が来たくらいだ、落とし穴もあったかもな。」
「此処で落とし穴っつったら激流直行じゃねえか?!」
「通気口も兼ねたトラップ、理に適ってるね。」
そうなれば、消去法で反対側通路に向かう他無い。
ただし、今度は僕が先頭で。
「2部屋ある……主犯はどっちだ……」
「錠の無い方さ。自由なのは主側。」
「んな簡単で良いのか?」
「さっきの異形を見る限りだと
手が大きい上に細かい動作ができなさそうだった。
彼等が鍵やらロック解除やらの解錠はしない。」
「んじゃどうやって施錠してんだよ?」
「人間か、異なる体型の異形がいるのかもな。」
片やナンバーロック解除が必要で
片やドアノブを回すだけの、つぎはぎの扉。
聞き耳を立てる……後者側から人気を感じられた。
これはもう間違いない。
この部屋に突入する事に決めた。