蟹〜
【混合結晶に困惑する石膏】
「やあ、始めまして。君達が会頭エニア様からの御推薦の」
「どうも、お呼びがかかって光栄だ。『真赭の尾』のオパールだぜ、末尾は16」
「始めまして、『真赭の尾』のカルメルタザイトです。末尾は0」
賑わう街道、その一角。テーブル一つを占領していたのは食屍鬼達。
各自個性的な装いだが青肌と銀髪そして黒白目は同じ。
二人を人伝に呼び集めた個体はジプサムという者で特殊な環境下で生活…
「なんというか、俺の立場が災いしちゃったんだろうねえ。気楽に引き篭もれる〜と思ったらよ。
研究や生産に使う化合物とかがたまに届かない事があってさ。
一度や二度ならまあバイト君のかわいいミスだと思って見逃していたけど、2桁やられちゃったらもう、ね。」
「つまりぃ?」
「つまり、秘匿の存在である貴方だからこそ発生した人為的ミス…或いはミスに見せかけた横行の可能性が?」
ご名答。
ジプサムは鉱山の所有者にて、製造非公開の個体。末尾は53。
だから宛名を間違えるのは普通ありえなく、それが2桁も続いたらうっかりでは済まされないのである。
だが、うっかりさんを殴り飛ばすだけならジプサム本人でも出来るのだがそうもいかない理由もある。
「費用が嵩むだけなら別に構わないけど、相場が偏るイコール資源も偏るだからよろしくないし、犯罪があったとしてもぶっつり商売を切らせるわけにはいかんのよ。」
アザルシスの商売はひたすら自由。だが自由の中にもある程度の秩序は要る。
つまる所、今回の依頼は原因究明をしてやんわり鎮められないかという内容だ。
「経費も報酬も会頭がたっぷり出してくれるよ。頼める?」
「お任せください、動向を探るのは得意ですから」
片や犯罪者の気持ちが判る者、片やフラグ(個人情報)を覗ける者。
探偵顔負けの異能力者コンビは同胞の頼みを承知。
…………そして今に至る。
ここは国境が絶妙な位置にある鉱山。
「…の所有者である末尾No.53、ヒーラーズゴールド」
「誰だよ、思い出して噴いたら化けてても怪しまれちまうじゃねーか」
「それをこれから探りに行くのでしょう?手筈通りに行きましょう」
新米食屍鬼カルメルタザイトが先輩個体への挨拶を兼ねた見学を頼み込む間に、オパールが架空の坑夫や事務員に化けて事務所やらで物証探しをする。
アポ無しでも堂々入れるのはアザルシスの邑楽かさ抜きにしても、セキュリティの雑さが伺える…
「んん?誰だお前」
お前等、と言わない辺り化けが通用したのはまず判った。
所有者たるヒーラーズゴールドは極めて巨躯。
顔は、青肌と銀髪に黒白目と確かに同胞の特徴はあるが果たして。
「私はカルメルタザイトと申しまして…」
「あ!そうか新入りだなあ!
なんも聞いてねーけど、真っ先にオレの所に挨拶しに来たんだな!
気に入った、顔も良いが器量も良い!
よし付いて来い、オレの縄張りを案内してやろう!」
新入り?の肩を掴んで上機嫌で奥へ行く……
「あーあー、あったあった。明らかに此処で採れる物じゃねーから俺でも判ったわ。
でももう全部売約済み、しかも元値の4割増で横流し。ひでえ話だ」
あっさり事務所に侵入して端末から情報を色々盗み見ていたオパール。
パスワードは一番上の引き出しに入っていた合成紙にしっかりメモ書きしてあったのであっさり突破できた。此処は鉱山の収入と従業員の給与が伴っていないのだろう。
もうこれだけでもジプサムの荷物を盗み出した証拠になり得るのだが……
とにかく、日を跨いでから二人は鉱山を後にした。
「ゴールドさんがどうも私を気に入ってくださったらしく、色々と面白い事を聞けましたよ」
「セクハラ王の話か?それとも成金王か?」
「真面目に聞いてください、あと王と付ければ私が何にでも興味を示すと思ったら大間違いですよ」
ヒーラーズゴールドという名は製造番号含めて偽物。
黒人種の人間で『食屍鬼の顔を利かせりゃどんだけ金が動かせると思ってんだ。奴等判ってないのがムカつくぜ。だから俺は話に乗ったんだよ!』
「『白い境界に』と」
「げー、歯糞絡みかよ〜。まあ食屍鬼の嫌がらせするっつったら妥当か」
「そう、そして証言通りなら他の非公開の方も利用されていると」
食屍鬼は計65人いてうち6人が非公開の存在だ。
「許し難いですね。後の5名も暴いてやりたいです…!」
「おいおい、今回はともかく見返りも無いのに何か熱くなってんだよ…」
「兄弟達も話を聞いて疼いてますよ!」
「ああ…はいはい。とりあえずジプサムに報告な」
カルメルタザイトは、5人分の食屍鬼のなりそないをその身に宿して肉体と能力を得てやっと食屍鬼として認められた異形。
食屍鬼に対する想いはどの個体よりも熱い。
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