蟹〜
ダイオプテーズの助言通りに辿り着いたそこは、きな臭い連中ばかりで空気も違った。
屋外だってのに煙たいのは相当だ。この柔らかく酸っぱい感じの臭い、薬物か。
立ち止まらないように目星を付けて、手頃な相手を捜す。
複数人固まっていたり、少人数でも明らかに手練っぽい奴等がいたりで接触が難しい。
ヒトを喰って力を付けた俺だが、まだまだ喧嘩は慣れていない。
屋内なら持久戦勝ち確なんだがなあ。
「ねえねえ、そこのおにーさん。」
甘ったるいアニメ声が俺を呼び留める。
振り向いた先にいたのは青肌…だが食屍鬼じゃない?角と翼と尻尾が生えてる。
何より線が細くてめちゃめちゃかわいいな?初めて見るタイプの亜人種だ。
屋根の端から此方を見下ろしてるのが気に喰わないが。
「初めて見るヒトだけど、どしたの?迷子?
ボクはイマチヅキっていうの。おにーさんは?」
良く言えばフレンドリーなのかもしれないが笑顔がかわい過ぎて怪しい。
ていうかこんな所の常連なら只者じゃあねえよな。
地元のガキだとしても肝が座り過ぎだ。
とりあえず質問を返すとしよう。名はともかく迷子というのは微妙に困る表現だが。
なんたって俺は自由の身ではあるが、スムーズな旅への活路が見えてない。
ある意味迷子になっているし、それもこれも他の食屍鬼だとか強い奴が多いせいだ…!
「え〜、フォスフォシデライトさんもすごいんじゃない?
強くないと相手の強さってわかんないもんだよ?
プルペラ鉄工場だなんて遠い所からこっちまで逃げ続けてるわけだし。
素人なのにやっぱりすごいってえ。」
笑顔でべた褒めして…
ん?俺はまだ何処から来たかまで言っていないし、素人だと?
背中に細く鋭い物が刺さり、『何か』が注入された。
振り払うと、雑に引き抜かれて地面に放り投げだされたそれが見えた。注射器だ。
一体何を仕込んだ?!雑に射ちやがって…ヤバい目が回る……力が入らん…
「眼鏡の食屍鬼っつーからビビったけど、見た事ねえなこいつ?」
「こらこら、雑に扱わない。」
何処からともなく群がるチンピラ達。
倒れて動かない食屍鬼の頭を足蹴にする者を、イマチヅキが制止する。
「組長が気に入ったらどうすんのさ」
「ははは、あの人は尻があれば他は十分だろ」
「とりあえず運んで『処理』しとこうぜ。おい、そっち持てよ」
「重…おいあと1人か2人手伝えよ、こいつ重いわ〜」
結局4人がかりで四肢を持って、ワンボックスカーに押し込む。
イマチヅキはというと、運ぶのは手伝わずにバックパックを回収してから後に続いた。
誰にも聴こえない溜め息を吐きつつ。
…なんか、ヒヤッとする。外側だけ…体の内側は熱いのに。
頭はぼんやりするし…ん?なんか視界が妙だな?
なんだこの圧迫感…何かに覆われている?何か頭に被っていたのか俺は?
頭の方を掴もうとしたが球状の物に阻まれているのが判った。
ヘルメットか何かか?このままだと周りも見えねえしとりあえず外してみるか。
「あ!駄目だよ、それ取ったら禿げちゃうよ!」
聞き覚えのある特徴的な声……イマチヅキだ。野郎、何処から喋ってんだ。
「今の君は薬槽に全身浸かって脱毛していた所なんだよ。
でもそろそろ良いかな?抜くね。」
下から吸引される感触が足元に伝わり、水位が下がっていく。
真緑で気付かなかったが、俺は真っ裸だった。
しかも毛が、無いだと…跡形も無い。
まるで元から生えていなかったかのように綺麗に…ガキでもこんなつるつるじゃないだろ…
「わ〜フィルターが詰まってる〜やっぱり食屍鬼って剛毛だな〜」
俺の見えない所で何やってんだあいつは?!俺の抜け毛を見てはしゃぐな?!
もう脱毛の原因らしき緑色の液体も失くなった事だし、ヘルメットを取って投げ捨てた。
出口は何処だ?通気口はあるから必ず何処かで外に通じているはずだ。
如何にも何かありそうな鉄板を剥がす。
この雑な配電は素人が見様見真似でやった感が強いな。
此処の『電流を奪い取って』その状態で此処を捻って…手応えありだ。
「ありゃ?!開いちゃった?!」
俺の背後に出入り口があったようだ。
ロックもセキュリティも馬鹿になって馬鹿みたいに口を開けた。
開いてるうちにとっとと出る。服は何処だ…
なんなら真っ先に来た野郎をぶっ倒して奪い取るか?
「ね、待って。」
のこのこ現れたのはイマチヅキだった。あざとい上目遣いをしやがって…
「そんな怖い顔しないでよう、ハメたのは確かだけどさ〜。ね?ほら、君の荷物。」
と、差し出したのは確かに俺のバックパック。畳まれた衣服付き…なんのつもりだ?
「警戒するのも無理ないけどボクね、君に興味持っちゃってさ。ね、一緒に出ない?」
協力するのか?
だとしてもこいつの狙いが判らない以上やっぱり素直に飲めねえ。罠かもしれん。
だがとりあえず荷物を奪い返して服を着た。
毛がないと寒くて仕方ないしもろ出しで外に出れん。
…俺が着衣する様子を楽しそうに見てなんのつもりだ?
「やっぱり服は着れた方が良いよね。組長は服が着れないからさあ。」
どんな変態だよ…。
いや待てよ、こいつ組長クラスの顔知ってんのか?これは使えるかもな…
よし、連れて行くか。妙な真似したらその時点で切り離せば良し。
俺主体に旅をする事を前提の絶対条件を設けつつ許可した。
「やったー!無難なバイトに退屈してたんだあ!」
ふん、こき使ってやるから覚悟しな。
屋外だってのに煙たいのは相当だ。この柔らかく酸っぱい感じの臭い、薬物か。
立ち止まらないように目星を付けて、手頃な相手を捜す。
複数人固まっていたり、少人数でも明らかに手練っぽい奴等がいたりで接触が難しい。
ヒトを喰って力を付けた俺だが、まだまだ喧嘩は慣れていない。
屋内なら持久戦勝ち確なんだがなあ。
「ねえねえ、そこのおにーさん。」
甘ったるいアニメ声が俺を呼び留める。
振り向いた先にいたのは青肌…だが食屍鬼じゃない?角と翼と尻尾が生えてる。
何より線が細くてめちゃめちゃかわいいな?初めて見るタイプの亜人種だ。
屋根の端から此方を見下ろしてるのが気に喰わないが。
「初めて見るヒトだけど、どしたの?迷子?
ボクはイマチヅキっていうの。おにーさんは?」
良く言えばフレンドリーなのかもしれないが笑顔がかわい過ぎて怪しい。
ていうかこんな所の常連なら只者じゃあねえよな。
地元のガキだとしても肝が座り過ぎだ。
とりあえず質問を返すとしよう。名はともかく迷子というのは微妙に困る表現だが。
なんたって俺は自由の身ではあるが、スムーズな旅への活路が見えてない。
ある意味迷子になっているし、それもこれも他の食屍鬼だとか強い奴が多いせいだ…!
「え〜、フォスフォシデライトさんもすごいんじゃない?
強くないと相手の強さってわかんないもんだよ?
プルペラ鉄工場だなんて遠い所からこっちまで逃げ続けてるわけだし。
素人なのにやっぱりすごいってえ。」
笑顔でべた褒めして…
ん?俺はまだ何処から来たかまで言っていないし、素人だと?
背中に細く鋭い物が刺さり、『何か』が注入された。
振り払うと、雑に引き抜かれて地面に放り投げだされたそれが見えた。注射器だ。
一体何を仕込んだ?!雑に射ちやがって…ヤバい目が回る……力が入らん…
「眼鏡の食屍鬼っつーからビビったけど、見た事ねえなこいつ?」
「こらこら、雑に扱わない。」
何処からともなく群がるチンピラ達。
倒れて動かない食屍鬼の頭を足蹴にする者を、イマチヅキが制止する。
「組長が気に入ったらどうすんのさ」
「ははは、あの人は尻があれば他は十分だろ」
「とりあえず運んで『処理』しとこうぜ。おい、そっち持てよ」
「重…おいあと1人か2人手伝えよ、こいつ重いわ〜」
結局4人がかりで四肢を持って、ワンボックスカーに押し込む。
イマチヅキはというと、運ぶのは手伝わずにバックパックを回収してから後に続いた。
誰にも聴こえない溜め息を吐きつつ。
…なんか、ヒヤッとする。外側だけ…体の内側は熱いのに。
頭はぼんやりするし…ん?なんか視界が妙だな?
なんだこの圧迫感…何かに覆われている?何か頭に被っていたのか俺は?
頭の方を掴もうとしたが球状の物に阻まれているのが判った。
ヘルメットか何かか?このままだと周りも見えねえしとりあえず外してみるか。
「あ!駄目だよ、それ取ったら禿げちゃうよ!」
聞き覚えのある特徴的な声……イマチヅキだ。野郎、何処から喋ってんだ。
「今の君は薬槽に全身浸かって脱毛していた所なんだよ。
でもそろそろ良いかな?抜くね。」
下から吸引される感触が足元に伝わり、水位が下がっていく。
真緑で気付かなかったが、俺は真っ裸だった。
しかも毛が、無いだと…跡形も無い。
まるで元から生えていなかったかのように綺麗に…ガキでもこんなつるつるじゃないだろ…
「わ〜フィルターが詰まってる〜やっぱり食屍鬼って剛毛だな〜」
俺の見えない所で何やってんだあいつは?!俺の抜け毛を見てはしゃぐな?!
もう脱毛の原因らしき緑色の液体も失くなった事だし、ヘルメットを取って投げ捨てた。
出口は何処だ?通気口はあるから必ず何処かで外に通じているはずだ。
如何にも何かありそうな鉄板を剥がす。
この雑な配電は素人が見様見真似でやった感が強いな。
此処の『電流を奪い取って』その状態で此処を捻って…手応えありだ。
「ありゃ?!開いちゃった?!」
俺の背後に出入り口があったようだ。
ロックもセキュリティも馬鹿になって馬鹿みたいに口を開けた。
開いてるうちにとっとと出る。服は何処だ…
なんなら真っ先に来た野郎をぶっ倒して奪い取るか?
「ね、待って。」
のこのこ現れたのはイマチヅキだった。あざとい上目遣いをしやがって…
「そんな怖い顔しないでよう、ハメたのは確かだけどさ〜。ね?ほら、君の荷物。」
と、差し出したのは確かに俺のバックパック。畳まれた衣服付き…なんのつもりだ?
「警戒するのも無理ないけどボクね、君に興味持っちゃってさ。ね、一緒に出ない?」
協力するのか?
だとしてもこいつの狙いが判らない以上やっぱり素直に飲めねえ。罠かもしれん。
だがとりあえず荷物を奪い返して服を着た。
毛がないと寒くて仕方ないしもろ出しで外に出れん。
…俺が着衣する様子を楽しそうに見てなんのつもりだ?
「やっぱり服は着れた方が良いよね。組長は服が着れないからさあ。」
どんな変態だよ…。
いや待てよ、こいつ組長クラスの顔知ってんのか?これは使えるかもな…
よし、連れて行くか。妙な真似したらその時点で切り離せば良し。
俺主体に旅をする事を前提の絶対条件を設けつつ許可した。
「やったー!無難なバイトに退屈してたんだあ!」
ふん、こき使ってやるから覚悟しな。
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