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ようやく傷口も塞がってきたか?
堪え性のない俺は顰めっ面で血を出し続けていたが、痛みと共にようやく治まった。
医療機関利用できねえのは地味に辛い。
正確には利用できるかもしれんが、食屍鬼は食屍鬼専用の病院に押し込められるらしい。
それ即ち束縛。俺の正体が知れる好機と天秤に掛けるまでもなく嫌だ。

「道すがらで良いから誰でも入れる病院とか診てくれる医者が見つかると良いね。
怪我だけならともかく、感染症とかになったらボク達確定死だよ。」

世の中敵が多すぎる………
ん?イマチヅキ、お前も複製魔族なんだろ?医療機関利用できねえのか?

「ボクはねえ、デザートローズ…
もとい組長と同じ医療機関に契約されているからさあ…」

ああ、出戻り状態になって何されるか判らんか。
うーむ………まあ必要になったら医者でも脅迫して診てもらうわ。
そのつもりで怪我も病気も罹るんじゃねーぞ、いいな?重症or重傷=死だ。



………だが今回は慎重になりすぎたかもしれない。
此処は個人の家のはずだが屋内の9割は倉庫で、1割しかない生活圏も生活感がない。
飲食物の蓄えも金の貯えもなければ、燃料もない。
イマチヅキ曰く此処は魔術師の家なのではないかと、その根拠に見せつけたのは…
うん?長方形の物だと思いきやよく見ると薄い生地が層になっているな?
なんだこれ?記号や図説がびっちり載っているが。

「本だよ、紙媒体の本!確実に高いし、引き取り手もいるんだよ!」

本?これがか?初めて見たな。
じゃあこのよく判らん記号の羅列も何かのマニュアルかメモ書きなのか?
薄いとはいえデータ取る度に紙とやらを重ねていたら重くなって嵩張るだろ。
価値が判らんがこれが高価なのか……じゃあ3つか4つ盗って売るか。

その引き取り手とやらが図書館とかいう、俺には馴染みの無い施設だ。
どんな奴からも本を取り扱うらしい。貸し借りメインだが売り買いもする。

「そこにいる偉い人がフォスフォフィライトなんだよ。」

なんか聞いた事あるな……ああそうだ、俺と名前が似ている食屍鬼か。
客として入ったなら無下には扱わんだろ、ついでだから俺の事を尋ねてみるかな。



外装からとんでもなくでかい施設だとは思っていたが、中は更に広かった。
広すぎないか?天井も見えない。イマチヅキ曰く空間歪ませているかも、とのこと。

「当館に何用だ。」

何処からともなくふらりと現れた巨漢、食屍鬼だ。ただしオッドアイで片目は緑眼。
魔術師って体型じゃねえな、これは軍人あがりの筋肉質だ。

「どうした、お前も何か『視えてる』のか?
どちらにせよ自己紹介しておこう、此処で司書長を務めているフォスフォフィライトだ。」

何言ってんだこいつ?ああ、あんたがフォスフォフィライトなんだな。
筋肉が勿体ねぇ仕事しているようだが、まずは本を買い取ってもらおうかね。
と、差し出した本を受け取るなり少し開いて即閉じた。今ので何か確認したつもりか??

「ふむ、時間はあるかな?個室に案内したいのだが。
連れの方は司書達と遊んで待っていてほしい。」
「はぁ〜い?」

俺の顔色を伺いつつ承諾したか、無難な対応だ。
俺もこいつが何を企んでるか判らんから刺激し難いが、密室なら俺にも部はあるだろう。
招かれるがまま個室に入る。

テーブルを挟んで厚みのあるソファがあり、お互い対面する形で腰掛ける。
厚みのある生地にケツが吸い込まれそうだ…上質だ…照明といい、一流だな。

「俺に何か尋ねたい事はあるのか?まずは本以外で。」

………どういう事だ?顔にでも書いてあったか?

「…不快に思わせたら申し訳ないが、俺の異能は自動で発揮されるんだ。
お前について知り得る限り語るぞ。
いらないならこの話は聞かなかった事にしてかまわないし、料金に影響も無い。」

へえ、まあ減るものでもないし聞いておくか。

「お前の製造番号は03003033。
俺の前に造られた個体で、携わった博士もウォリック博士同様だ。」

ウォリック博士?聞いた事ねえな。

「なんだと?………なるほど、それであの『数値』か。では教えよう。
食屍鬼シリーズを造ることを許された数ある博士のうち一人で、唯一の人間だ。
俺達をより人間社会に近しい存在として造ることを目標としている。」

なんだと、近すぎて奴隷みたいに扱われるのがオチじゃねえか?

「少なくともウォリック博士に限ってそんな事はない。
あの方は人間ではあるが食屍鬼を理解してくれている。
お前は恐らく、博士の知らぬ所で何者かに記憶操作をされ良い様に扱われたんじゃないか?」

記憶操作だと?
確かに俺はどういう経緯で工場に閉じ込められていたか判らんが……

「心当たりが2つある。
1つは強い外傷を受けたことによる記憶障害。
俺達は丈夫で死ににくいが、頭部に致命傷を負うと後遺症で記憶を失ったり人格が変わる。
もう1つは…此方は当人をまだ見た事がないから確証はないが、俗に言われる洗脳手術。
治療を施すふりをして、脳になんらかの細工をして本人の意思に関係なく従わせる。」

どちらもあり得そうで特定し難いな…
常人なら死にかけるような労災には何度も遭ったし、洗脳もありえそうだし。

「お前も相当苦労してきたようだな。
強奪を稼業に過ごしてきたようだが、異能を駆使していたのか?」

知れ渡ってんな俺も。

「この本、2年前にとある魔術師殿が当館から購入した物だ。
…外傷もなく妙な仕掛けも施されていないから、今回は大目に見てやろう。」

…この野郎、俺はただ売り値を崩したくないから保管には配慮していただけだ。
普段は雑に『奪って』いるからな?

「………お前の異能は『奪う』のではなく『逃がす』ためのものじゃないか?
ウォリック博士ならそんな力を授けてくれそうな気がするんだ。
………ふふ、そんな顔をするな。さて、まあこの本はお前から買い取らないとな。」




「ま、まさかネットバンク使う事になるなんてボクも思いもしなかったよ〜!
ねね、あの大金どう使うんだいフォシデ?」

さあな、とりあえず図書館が見えない所まで移動だ。ふん。
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