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誰かさんの小屋を占拠し、雑魚寝の昼寝をしていたがイマチヅキに安眠妨害をされた。

「フォシデ!ねえ、これ見てっ」

端末に映るニュース記事を見せつけてきた。
タイトルは……『新プルペラ鉄工場、襲撃に遭う?!』だと?
やっぱり別工場をメインに移したけど其処でもアクシデントが起きたか、ざまぁねえ。

「もっとよく見て、その襲撃したってのが
名前は出てないけどやり方からギベオンって判るよ!」

なんだと……

『伸縮自在に大量に肉体を生やす異形が押し入り
車両を振り払い玄関ホールを破壊したが
食屍鬼(アメジスト氏)が立ちはだかり、内部侵入を阻止。
搭乗していた警護ロボごと握り潰されはしたが
直後別の食屍鬼(エメラルド氏)の加勢により異形は退散した。
と現場を見ていた従業員は語る。
(※詳細は後日コラム欄で綴ります)』

なんだと、新工場になってからも食屍鬼を雇ったのか?
しかも現場を語った奴が従業員なあたり
ついに工場も捨てて逃げやがったのか、マクロンハーツの野郎。

「ギベオンが出てきたから、もしかしたら裏金に手を出しちゃったのかもね。
取り立て代理として脅迫しにきた、でも自分に恐れず歯向かう奴もとい
雇われ食屍鬼が現れてギベオンもムキになった。って、とこじゃない?」

なるほど、だが1つ腑に落ちねえ事がある。
なんでこんな、しょうもない所で化物相手に命懸けで抵抗したんだ?
握り潰されたって、あの時の巨腕を思い出させるな…
馬鹿か、このアメジストって奴…

「ボクも知らない個体だなあ、少なくともアウトローなヒトではなさそう。
でもどうやってあいつ相手に粘れたんだろうね?」

それは俺も気になるが。
てか、逃げりゃあいいのによ。人間なんてほっといて。
どうせプルペラ鉄工場が新しくなったって、優秀な屑の集まりに違いねえ。
人間を守る義理なんて…

…こいつももしかしてウォリック博士に造られた個体か?

「フォシデ、アメジストが気になる?
死んだとは書いてないから多分まだ生きてるけど死にかけてるとは思うよ。
ほらここ、治療費募金願いが出ている。」

は?金が足りないのか?どういう事だよ、医療機関はどうした?
まさかマクロンハーツの野郎、そもそもまともに諸々手続きしないまま契約したとか?
だとしたらザル手続きが過ぎる、足元見られ過ぎてる、ざけんな。
アメジストも大馬鹿野郎だ、金もろくに貰えてねえのに命を懸けて本当に馬鹿だ。
この馬鹿に加勢しにきたエメラルドって奴も馬鹿だよちくしょうめ…

「ええ、そんな馬鹿馬鹿言うと思わなかったな。
ボクもいつもフォシデに庇ってもらえてたから
無傷で済んでいたのを思い出していたのにい。」

イマチヅキ、大馬鹿野郎以上の馬鹿の表現知らねえか?
あったらそれを匿名に使って金振り込んでくれねえか。
ほらあのネットバンクに入れたあの端金だよ。



とある病院、の会議室。
医療関係者以外が諸事情で大人数集まっているため急遽間借りしていた。
端末相手ににらめっこしている者複数人、泣きながら狼狽えてる者複数人。
皆に共通していたのは、ある者への存命を願い危機を脱するという願い。

「此処まで管理不十分なのは想定外だ。
マクロンハーツの仲介無しで直接的な援助さえ出来ないように仕組まれているな。
この徹底ぶり、見える金は全て触れておきたい欲が見て取れる。それはさておき…」

と、表情こそ至ってクールだがこの食屍鬼もぶ厚い眼鏡の底には焦りの色が出ていた。

「エメラルドさんでも難しいか……」
「関係者以外からの募金活動が唯一の望み…だけど
関係者以外がアメちゃんにどれだけ尽くしてくれるんだあ……」

ありがたい事にリアルタイムで募金は増え続けている。1や2、たまに10…
現実はこんなものである。
ありがたいが、このまま待っていたら何百年待っても足りない。
しかし他人に割ける金は庶民にまず無いのでやはりこれが現実。
アザルシスでもほんの一握りな物好きな富豪が
この慈善活動が目に留まらない限り達成は叶わない。
だが富豪は多くの者に求められている。
何より造られた存在への使い捨て意識が世間は強い。

「オレだって出せたら出したいのに、見殺しにしたくないの…に……え?あれ?
ちょ、ちょっと皆見てくれ。オレの見間違いかもしれないから…!」

目を何度も擦っては凝視を繰り返す一同。
数値の表示に変化が生じている、即ちそれは募金額に達していたのを意味していた。

「間違いない、関係者にこの事を報せてすぐに治療のステップを進ませるとしよう。
それで、誰が入れてくれたか調べられるか?」
「えっと、多分このID『175silly』で『ワタリバッタ』ってアカウントのヒトですね!」
「一人でこの金額入れてくれたのか?!何者なんだろ……」
「アメジストに聞いてみたらどうだ?顔は広いらしいからな。」
「アメちゃんは超広いですよ〜。何せ世界一周したみたいですから。
お金なくなったから働きにきたって言っていたし。」
「ふふ、回復したらインフルエンサーでも任せてみるかな。」

悲愴感から一変、皆笑顔に変わり活気付いたのである。


『逃がす』だなんて冗談じゃない。
盗みたい物は盗んで、壊したい物は壊して、殺したい奴は殺す。
『奪う』事に特化した、俺はじっとしていられないイナゴみてえな食屍鬼だ。

「それってえ、逆に言えば〜
大事にしたい物は大事にして、直したい物は直して、生きてほしい人は生かすんだよね?」

ええいわざわざ逆に言うんじゃねえ、何ニヤけてやがんだ!
ったく、次は何しようかな…
そうだな、入れ墨でも挿れてみるか。渋い柄でハクを付けてえ。
腕の立つ彫師とか知ってるか?イマチヅキ。其処が次の目的地だ。
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